苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

ものの見方

実験科学と自然史推測学-パラダイムの違いー

1.2種類の「科学」 17世紀にガリレオ、ケプラー、パスカルらが確立した自然科学は、実験によって仮説を実証するもの、つまり、実験科学であった。ある事象について仮説を立て、仮説に基づいて実験をすることを繰り返しつつ、事象の本質に迫っていくとい…

愛するとは受容することだけではない

愛するということは、ただ相手をありのままに受容するだけでなく、相手を責任ある人格と認めることである。

自然科学の変質

1.自然科学の本来の守備範囲 近代自然科学の方法論が確立したのは17世紀のことである。その背景には、キリスト教信仰があったことは、教会史家たちの今や常識である。ルネサンスの三大発明はいずれもアジア圏におけるもので、羅針盤、火薬の発明はともに…

情けは人の為ならず

施せし情けは人の為ならず おのが心の慰めと知れ われ人にかけし恵みは忘れても 人の恩をば長く忘るな これが新渡戸稲造のことばとは知りませんでした。

近年の福音派混乱の根本原因

「拠り所がこわされたら正しい者に何ができようか。」詩篇11:3 私が東京基督神学校の学生であった時代、宇田進教授がチャペルで上記のみことばを引いて聖書信仰の重要性について説教をされたことがあった。聖書信仰とは、「聖書はすべて誤りなき神のみこと…

「そんな考えは古いよ」という古臭い考え方と聖書

19世紀の思想界は進歩史観の時代だった。人類の歴史はより良い方向に向かっているという考え方である。コント、ヘーゲル、マルクス、そしてダーウィン主義思想家たちがその典型である。彼らは、理性の光が閉ざされた中世から抜け出て、近代は理性の時代とな…

ポストモダン風の「愛」の誤解

<主観的事実がすべてであり客観的事実などは存在しない>というのがポストモダン思想である。だから<あなたの真理はあなたの真理。私の真理はわたしの真理。>ということになる。それが心理療法に影響を及ぼし、日本のキリスト教界にはここ40年ほど前から…

子とされた恵みの重要性

先週、所属教団の秋の研修会に参加して思ったこと。 「ルターはカトリックの神人協働説(律法主義)に苦しんで、信仰義認を聖書に発見しました。救いは恩寵のみ、信仰のみです」というプロテスタント教会の牧師が、バリバリ頑張って伝道牧会していて成果主義…

神なき「多様性」の末路

パリ・オリンピックの開会式におけるパフォーマンスをニュースで見ました。今はやりの「多様性」を金科玉条にして、自由を暴走させたらどれほど醜悪なものとなるかを具体化して世界に見せたということでは意義があったということなのだろうか。 私は大学の卒…

都知事選で注目したこと

都知事選は一応小池百合子さんが都知事を続けることになりましたが、注目されたのは石丸さんでした。石丸さんだけが、地方の首長をしたものとして東京都のことだけでなく日本全体のことについて発言していたからです。20年後には、日本の人口は1300万人…

中国人はなぜ漢字がきれいに書けるのか

日本人は教養人に悪筆な人が多いように思います。中国人はたいてい、特別な教養人でなくても、立派な字を書く人が多いように思います。さすがに漢字の国だなあと感心します。 日本に移住した中国人に書き方教育のちがいを聞いてみたら、中国では小学校低学年…

聖書解釈には、同時代文献との類似性でなく相違点が肝心

半年ほど前に、ふと思い出して書いたことは、やはり大事なことだと思うので、もう一度書いてみる。 大学時代、国文から哲学に専攻を変更して哲学書を読み始めたとき、難しくて何を言いたいのかがわからなかった。そこで指導してくださる飯塚勝久先生に「何か…

土俵を作り直さなければ

「自由主義神学の聖書学者に対しても、勝負をするためには、相手の土俵に上がらねばならないんだよ。」というふうなことを聞かされることがある。確かに、土俵に上がらなければ相撲はできない。そういう学問世界の人は、それはそれで苦労だろうなあと同情し…

オリバー・ツイストとキリスト者の生涯

「わたしは父にお願いしよう。そうすれば、父は別に助け主を送って、いつまでもあなたがたと共におらせて下さるであろう。それは真理の御霊である。この世はそれを見ようともせず、知ろうともしないので、それを受けることができない。あなたがたはそれを知…

神のご計画の全体を

私は、神のご計画の全体を、余すところなくあなたがたに知らせておいたからです。 使徒20:27(新改訳第三版) 使徒パウロはエペソの長老たちとの訣別のあいさつの中でこのように語っている。ここには使徒が説教をするにあたって心がけていたことが記されて…

無機的な学校風景

今朝も苫小牧の東の方を歩いていると、広々とした校庭のある小学校がありました。北海道だから十分な面積がとれていることはいいことですが、校庭には木が一本も生えておらず、かつ塀というものが存在しません。だだっ広い校庭の周囲を等間隔にコンクリート…

各書は読まれたいように読むべし

文章というのは、その筆者が「こんなふうに読んで欲しい」と意図したような読み方をするときに、正しい理解と受容をすることができるものである。例えば、一篇の詩は一篇の詩として書かれているのであり、全体としてその流れがあって書かれているのであるか…

下種の勘繰り

大谷君に関する疑惑が晴れたようです。 この種の「疑惑」とそれに対するマスメディアやユーチューバーなどの対応を見て思い出すのは、会田雄二が小野田寛郎少尉について書いた文章のことです。 小野田少尉が戦後ずっとルバング島に潜伏していることがわかっ…

女性専用車両に乗って「法律違反ではない」と騒ぐおじさん

今朝たまたまニュースを見たら、わざわざ女性専用車に乗って、乗客や乗務員に注意されると、「女性専用車は一般車両だから、法律上、男性が乗っても問題ないのだ。日本は法治国家だ。」という内容のことを口汚く罵るユーチューバー男性が出ていた。 法律はそ…

教会の改革とは 

「改革された教会は常に改革され続けなければならない(羅semper reformanda ecclesia reformata)」という標語がある。ある人々は、現代の世の風潮に合わせることが教会の改革だと思い込んでいるようだが、大間違いである。「改革された教会は、常に、神のこ…

多であること一であること

父子聖霊の唯一の神が、多様にして一つの世界を創造したと信じているキリスト教会は、世が一斉に「統一性」を強調する時代には「多様性」の重要性を語らねばならないし、世をあげて「多様性」を強調する時代にあっては、「一つ」であることの重要性を語らな…

整体師のことばと近代聖書学

Youtuberをしている整体の先生が話していたのですが、ハワイ大学から「すぐに来い。死後間もない人体が手に入った」という知らせがあったので、そんなチャンスはめったにないので出かけて、その死後まもない人体を動かしつつ解剖するのを見て勉強することが…

遅塚忠躬『フランス革命―歴史における劇薬』

遅塚忠躬『フランス革命ー歴史における劇薬』という本を読んだ。何十年ぶりかに読んでみると、よく書けているなあという感想。 「劇薬」というのは、効能がある代わり恐るべき副作用があるという意味である。フランス革命は「自由・博愛・平等」というスロー…

聖書を原語で読む意味って・・・

プロテスタントの神学校は、宗教改革の伝統に則って、聖書の原語、原典釈義を大切にする。16世紀の改革者たちはローマ教会のウルガタに基づいて論じる学者たちに対して、ギリシャ語、ヘブライ語の聖書を引用して論じたそうである。神が、これらの言語をも…

哲学書、文学書であっても

哲学書を読み始めようとするとき、岩波文庫に入っている哲学書をちらちら見てもさっぱりわからなかったので、哲学辞典が必要だと感じた。そして指導くださる飯塚勝久先生に「哲学辞典を買わないといけないでしょうか。」とおたずねしたところ、「いや、哲学…

神様抜きで納得したいという衝動

主イエスが水の上を歩いてきたのはガリラヤ湖の浅瀬を歩いてきたのを弟子たちが見間違えたのだとか、イエスの復活というのは、弟子たちの心の中にあの優しく力強いイエス様がよみがえったことを意味しているのだ、などという人々がいる。このような人々は合…

教義体系の三類型

A.A.ホッジは、罪観は神学体系のアルキメデス点であると指摘し、罪認識の深浅によって、三つのタイプの神学体系が形成されてきたと指摘している。罪認識が徹底していれば恩寵救済主義となり、原罪を否定すれば自力救済説となり、罪認識が中途半端であれば神…

聖書そのものを読むこと

神様は、聖書各書が書かれた同時代の言語・文化を器として、これにメッセージを載せて啓示をお与えになりますから、その同時代の言語・文化について理解を深めることは釈義をする上で有用である場合があることは、当然でしょう。しかし、では当時の言語や文…

類似よりもむしろ相違点が大事ーブルトマン、NPP、ウォルトン

聖書の見方に関する大きな枠の話を少し書いてみます。 その昔はブルトマンがギリシャ思想の色眼鏡をかけてヨハネ文書を読んで、今はNPPがユダヤ教の色眼鏡をかけてパウロ書簡を読んでいる。そして、ユダヤ教の言葉とパウロ書簡の中の言葉の類似を見つけると…

人権思想には二つの流れがある

人権思想の根源には二つあって、一つはキリスト教であり、もう一つはジャン・ジャック・ルソーの反キリスト教的思想である。前者は、英国のジョン・ロックの『統治二論』に明白に表現されている。ロックがいう人権とは、創造主が被造物である人間に与えた自…