苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

テサロニケ人は「てさろにけじん」?

  ある知人が、新改訳聖書の翻訳にかかわったある学者先生から、「日本人を『にほんびと』とか、アメリカ人を『あめりかびと』と読まないでしょう。だから『ローマ人』は『ろーまびと』でなく『ろーまじん』と読むように。」と指導されたことがあるという話を聞いたことがある。だから、新改訳聖書の翻訳者は、第一テサロニケ書の1章1節で、「テサロニケ人の教会へ」に「テサロニケじんの教会へ」とルビを振っている。

 だが、「ローマ人への手紙」は「ろーまびとへのてがみ」と読み、「コリント人への手紙」は「こりんとびとへのてがみ」と読み、「テサロニケ人への手紙」は「てさろにけびとへのてがみ」と読むものとされて来たのには、意味があるのである。漢文訓読のルールにおいて、「楚人」は「そひと」、「斎人」は「さいひと」、「呉人」は「ごひと」、「越人」は「えつひと」と読む。中国人は「ちゅうごくじん」と読むのだが、中国という国のある楚とか斎とか呉といった地方を指す場合には、「そじん」「さいじん」「ごじん」と呼ばず、「人」は「ひと」と読むのが漢文訓読のルールなのである。だからそのルールに則るならば、ローマ帝国の中の一地域としてのテサロニケの人々に関しては、「てさろにけひと」と読むのが正しいのである。