苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

憲法制定プロセスについて、三冊。

 5ヶ月ほど憲法制定プロセスにかんする本を何冊も読んできましたが、専門書は別として、次の三冊がよいと思います。

1.鈴木昭典「日本国憲法を生んだ密室の九日間」・・・GHQ民生局側での制定プロセス全体を詳細に知る。ただ、欠けた部分を下の二冊で補うとよい。
2.小西豊治「憲法押しつけ論の幻」・・・GHQ鈴木安蔵憲法研究会)を結んだカナダ人、H.ノーマンのこと。このノーマンは、父親が信州伝道に活躍したダニエル・ノーマンであり、H・ノーマンは日本研究の第一人者であり民生局に大きな影響力をもっていた。
3.堤堯「昭和の三傑」・・・幣原喜重郎の9条戦力放棄提案の意図を読み解く。どの学者の本よりも、洞察力がすぐれていると思う。

 大雑把には、日本国憲法はやっぱりGHQ民生局が主体となってつくられ、制定されたものだと言わざるをえません。その人々が親日家の理想主義者たちだったことが、戦後の日本に幸いしたのだと思います。米国には当然、戦後の日本を完膚なきまでにたたきのめしたいという人々もいましたからね。
 制定過程には、明治の自由民権運動とくに板垣退助のブレーンであった植木枝盛の研究者、鈴木安蔵がH.ノーマンを介して、新憲法制定に影響しています。<儀礼天皇制、国民主権基本的人権の尊重>は植木〜鈴木によって表現されていて、GHQ民政局の人々の思いと一致しました。『植木枝盛選集』という岩波文庫の一冊もよい本です。

 戦争・戦力放棄は幣原が1月24日のマッカーサーとの会談で提案・一致したというのが、翌月あたまのマッカーサー三原則のひとつをなしています。戦争・戦力放棄というのは、ひとつは戦前、平和外交の旗手であった幣原の理想であって彼はパリ不戦条約(1924年)の制定に尽力したことがあり、もうひとつは戦争・戦力放棄をしなければ、天皇は守れないという国際情勢があったからです。日本の共産化を防ぐために、マッカーサー天皇制を維持したかったし、個人的にもヒロヒトさんを好きになっていたのも事実。ただ、ほんの数年後、9条を与えたために、朝鮮戦争(1950-1953年)に日本の兵隊を使役することができなくなり、マッカーサーは米国議会から責められることになる。智謀の宰相幣原はそれを見越していたという堤さんの読みは正しいと思う。


 四日間ほどブログ更新をお休みすることになると思います。読者の皆さんお元気で。