日本国憲法の基本プランは、憲法研究会のおもに鈴木安蔵さんが記した「憲法草案要綱」(1945年12月26日)であるが、鈴木安蔵さんにもっとも深い影響を与えたのは、明治の自由民権運動家、植木枝盛である。つまり、植木枝盛は日本国憲法の思想的淵源なのである。その思想は、驚くほど開明的であり、今日の政治に無関心で、参政権の行使をもサボッてしまいがちな我々をも叱咤激励する。
「まあ、あなた方はなんと思わっしゃる、国の事は民の事とは別の事ではござらぬぞ。畢竟国は民のあつまるもの、政府は国の政事をつかさどるもの、政事は人民の事にして人民のことが政(まつりごと)じゃ・・・」(民権自由論)
「ルーソウ」という人の説に人の生るるや自由なりとありて人は自由の動物と申すべきものであります。されば人民の自由はたとえ社会の法律を以てこれをまっとうし得るとは申せ本と天の賜物にて人たるものの必ずなくてならぬものでござろう。もし人にしてこの天の賜たる自由を取らざれば、これ天に対(むか)って大いなる罪となり、自分にとっては大いに恥なり。」
「そもそも国とは人民の集まるところのものにて、決して政府によってできたものでもなく、君によって立ったものでもない。国はまったく民によって出来たものじゃ。その証拠には昔から王なくても民あれば国は出来ることなれども王ありても民なくては国のある処なく、またまったく民がなければ初めより王などいえるものはない。」
「今一つ国は人民の自主自由とならびに公の憲法という二つのものをもて護らねば大丈夫にはならず安全には参り難し」