苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

日本国憲法の制定過程(その2)  原案を書いたGHQの人々とは?

Ⅱ 日本国憲法の制定プロセス


 「米国から押し付けられた」と宣伝されている日本国憲法。誰が作ったものであろうと、よいものはよいわけで、押し付けられたからといって改正しなければならない理由にはならない 。三輪明宏「外国人も人間です。アメリカ人も人間。日本人も人間。中国人もユダヤ人も朝鮮人も、全部人間です。だったら、何国人が作ったものであろうと、人間が作った法律で、すばらしければ、それでよいではありませんか。人間として、地球人としてよいものであれば、よいのです。日本人のどこかのバカな人がよってたかって作るより、はるかによいものです」『憲法を変えて戦争へ行こう…という世の中にしないための18人の発言』(岩波ブックレット
 だが、事実として、少なくとも日本国憲法の根幹は、日本人の「発案」によるものと相当一致している。「GHQ押し付け憲法論」を主張する論者は、自説に不都合な憲法研究会のことと、幣原喜重郎首相とマッカーサーのやり取りについて一般読者の目から覆い隠すか、過小評価することに務めている 。
日本国憲法の三大原理は<基本的人権尊重・国民主権戦争放棄>である。そして、もうひとつの特徴は象徴天皇の定めである。


1 日本国憲法制定の過程の概観
 
(1)日本国憲法を書いたGHQ民政局の人々

 改憲派はしばしば、日本国憲法はわずか九日間でGHQの素人たちがつくったお粗末な憲法にすぎないというのが常なのだが、果たしてれは事実なのか。
 民政局長コートニー・ホイットニー准将。運営委員会。コロンビア・ナショナル・ロースクール夜間部で法学博士。本職は弁護士。
民政局次長チャールズ・L・ケーディス大佐。運営委員会と司法権に関する小委員会を兼任。コーネル大卒、ハーバード・ロースクール卒。弁護士。連邦公共事業局服法律顧問など歴任。ニューディーラー。
民政局法規課長マイロ・E・ラウエル中佐。運営委員会。司法権に関する小委員会を兼務。スタンフォード大、ハーバード・ロースクール卒。弁護士。政府諸機関で法律顧問。高野岩三郎ら「憲法研究会」のメンバーなど、在野の憲法草案を取り入れる橋渡しをした。
ルフレッド・R・ハッシー中佐。ハーバード大学政治学学士・バージニア大学ロースクールで法学博士。弁護士。日本国憲法前文の草稿を記述した。文章家。
フランク・E・ヘイズ陸軍中佐。立法権に関する小委員会。本職は弁護士。国会に関する部分を記述。
サイラス・H・ピーク博士。行政権に関する小委員会担当。コロンビア大学修士号・博士号取得。コロンビア大学助教授。
ミルトン・J・エスマン陸軍中尉。行政権に関する小委員会担当。コーネル大学卒、プリンストン大学政治学行政学で博士号。合衆国人事院で行政分析担当官。
ピーター・K・ロウスト陸軍中佐。人権にかんする小委員会担当。オランダのライデン大学医学部卒。シカゴ大学社会学と人類学で博士号。
ハリー・エマソンワイルズ。人権にかんする小委員会。ハーバード大学で経済学卒。ペンシルベニア大学で博士号。テンプル大学で人文学博士号。
ベアテ・シロタ嬢。人権にかんする小委員会。特に女性の人権の項目を担当。日本生活の実体験があり、六ヶ国語を駆使して諸国憲法の人権条項を調査・起案した。
その他、多士済々であって、到底、改憲論者たちがいうような「素人集団」ではない。
 以上に見るごとく、日本国憲法の原案であるGHQ憲法マッカーサー憲法)は、開戦直後から知日派の米国知識人たちが準備してきたものをもととして、練り上げ準備されてきた米国の占領政策を背景としているものであって、現憲法をおとしめる人々がいうように、短時日で素人たちが作り上げた粗末なものではない。
 
 もし「素人」ということでいうならば、幣原内閣の憲法担当であり、帝国憲法改正を表面的・部分的なものでよしとして、GHQにつっぱねられた松本烝治国務大臣は、商法の専門家ではあっても、憲法については素人であった。