映画「ラーゲリより愛をこめて」が絶賛上映中だという。戦後、ソ連が日本人将兵57万5000人を強制収容所(ラーゲリ)に抑留し、劣悪な扱いの中で6万人が死んだという歴史的事件に基づいている。ラーゲリにおける日本人兵士の人間模様と、主人公山本の帰りをひたすら信じて待つ妻の夫婦愛が描かれている。山本は収容所にあって、希望を与え続ける人だった。人間性を破壊される過酷な状況のなかで、愛・希望というものが人を生かしたという実例である。フランクルの『夜と霧』を彷彿とさせる。
これは辺見じゅん『収容所からの手紙』の映画化である。本書については、以前、書評を書いたので参照されたい。
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しかし、ソ連軍は、57万5000人もの日本軍将兵を、どうして無抵抗のうちに抑留し、強制労働に従事させることができたのか?マスメディアにも緘口令がしかれているのか、ほとんど知られていないが、日本政府が天皇制を維持させてもらうために、裏でソ連と取引をしたからである。政府は南では沖縄と沖縄県民を米国に提供し、北ではソ連に575000人の将兵をシベリア開発の労働力として提供したのだった。
こちらをご覧いただきたい。
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自民党政府はソ連の共産主義政府はひどいというキャンペーンをずっとしてきたし、実際、共産主義政府は独裁を原理とするから、ひどいのはわかるけれども、それならば戦前・戦中の日本政府はよかったのかというと、そんなことはない。権力者は右であれ左であれ、己が体制維持のためには国民を売り渡すという習性があるのだ。そのことは申命記17章16節で神が警告していることである。
聖書は、国家というものは、神が堕落した人間世界にある程度の秩序を維持し、格差を是正するために必要なものとして、摂理をもって建てられたものであると教えているが(ローマ13章前半)、その国家というものはときに、こういう過ちを犯すのだという警告も与えていることをもわきまえておく必要がある。