第二次大戦後、武装解除された日本軍将兵約60万人がソ連によってシベリア開発のために極寒の劣悪な環境下で強制労働に従事させられ、約6万人が望郷の念を持ちながらシベリアの地で命を落としました。
その一人に山本幡男さんと言う人物がいました。彼は過酷な状況下にあっても人間らしく生きた人だったので、収容所の友人たちは、なんとしても彼が密かに書いた「遺書」を家族に届けたいと願って分担して記憶し、戦後11年ぶりに日本に帰還すると、遺書を再現して家族に届けたのでした。また、山本氏の短歌、俳句、文章も友人たちの記憶によって復元されて、山本家に届けられました。
著者辺見じゅんは、この驚くべき出来事を知り、「偉大なる凡人の生涯、それもシベリアの地で逝った一人の肖像を描きたい」と願って、本作をものされました。
強制収容所という異常に過酷な環境下で、人が人として生きていくことについては、学生時代にV.フランクル『夜と霧』で考えさせられましたが、私にとって本書はこの重い主題を考えさせるもう一冊の本となりました。
ところで、なぜ60万人もの将兵が大人しくソ連軍に投降し、強制労働に服するということが起こりえたのでしょうか。ソ連が勝手にやったことであるかのように印象付けられて来ましたが、事実は、日本政府が国体護持と引き換えに、彼らをソ連に労働力として提供したからであることが、二つの関東軍文書から明らかになっています。
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http://koumichristchurch.hatenablog.jp/entry/20141009/p3