苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

聖書眼鏡で「教会と国家」を見る

 昨夕は、JECA関東4地区主催の2.11ZOOM集会で、お話をしました。結構多くの方が集われたようです。2.11集会ですが、多くの人が参加できるようにと、一日ずらしました。主題は「聖書眼鏡で『教会と国家』を見る」ということで、三つの聖書眼鏡を用意しました。

 

ローマ13:1‐7

       聖書眼鏡で「教会と国家」を見る  レジュメ

序 俗権という語

  

1 聖書眼鏡1:俗権の二つの顔・・・二つのR13章

 

(1)神のしもべの顔・・・ローマ13:1-7

 ①神のしもべ・・・異教徒の王であっても

 ②2つの務め:剣による社会秩序の維持(3-5)、徴税・富の再分配(6,7)

 

(2)悪魔の手先の顔・・・黙示録13章

 ①「産みの苦しみ」:繰り返される再臨の前兆

 ②俗権の悪魔化

 「海から上ってくる獣」(1節)・・俗権、

 「竜」(2節)・・・・・・・・・・悪魔

 「地から上って来た獣」(11節)・・偽預言者

 ③悪魔化した俗権のふるまい

 神の民を迫害し神を冒涜します(6節)。覇権主義(7節)。

 偽預言者による思想・宗教統制(11,12節)。

 経済統制による弾圧(16,17節)。

 

(3)歴史上の実例

 北イスラエル王国初代王ヤロブアム1世はによる金の子牛崇拝。バビロンの王ネブカドネザルの金の柱崇拝強要。ヒトラー、第二の獣の役割を果たしたのは「ドイツ的キリスト者」。国家神道体制下:現人神天皇は第一の獣、第二の獣の役割を果たしたのは文部省。文部省は、教育勅語明治22年)という教典をもって思想統制をした。日本の教会も偽預言者化した。背後には龍がいた。 現在ロシアの大統領は第一の獣、ロシア正教大司教キリル1世は第二の獣。背後には彼に力を与えた龍がいる。

 

2 聖書眼鏡2:律法と王・・・・・・・・申命記17:16-20

 

 王はサタンの罠に陥らぬように注意せよ。

(1)王は自分のために馬を増やすな、民をエジプトに帰すな

 ①王は馬を増やすな・・・軍備拡大に警戒 16節

 ②民をエジプトに帰すな・・・棄民政策の禁止

 

(2)棄民政策・・・沖縄とシベリアで

 ①沖縄

 日本国憲法が施行された直後の1947年9月中旬、昭和天皇が沖縄を米軍の基地として占領し続けることを希望するメッセージを米国国務省あてに送りました。

 ②シベリア抑留

 日本兵63万人が抑留され、6万7千人が極寒の地の劣悪な労働環境における強制労働で死にました。日本兵士をソ連に売り渡す密約が結ばれたという史料が明るみに出てきました。国体護持と引き換えに、日本政府は63万人を労働者としてソ連に提供したのです。 

「棄兵・棄民の責任を問う」訴訟。下に掲げたのは大河原壽貴弁護士のことば。

  出典 https://www.daiichi.gr.jp/publication/makieya/p-2008s/p-05

koumichristchurch.hatenablog.jp

 

(3)王は律法の下にへりくだれ(立憲主義制限君主制

 ①申命記立憲主義制限君主制)(申命記17:18‐20)

 王は律法に制限された。近代憲法が俗権から守るものは、人民の自然的権利、すなわち基本的人権です。英国の名誉革命を支えた思想家はジョン・ロック『市民政府論』(岩波文庫、1968年)。

 

 ②日本国憲法は日米合作の「奇跡」である

 4原則<象徴天皇国民主権基本的人権の尊重・戦争放棄主義>1947年施行

a 日本を軍国主義から解放することを意図した親日派知識人の周到な米国の研究

b 憲法研究会「憲法草案要綱鈴木安蔵

 自由民権運動家、特に植木枝盛(1857-1892)の思想。儀礼天皇国民主権、人権尊重。

 GHQ民政局の担当者が注目し回覧し、取り入れられた。

 *詳細:HP水草牧師の書き物⇒ 歴史思想倫理⇒「聖書と歴史でこの国を考える」の第二部

c 幣原喜重郎首相による天皇維持と「戦争放棄」提案

 1946年1月24日、幣原喜重郎首相はペニシリンのお礼にマッカーサーを訪問し、戦争放棄条項を憲法に盛り込むことを提案した。 

d 帝国議会での審議

 マッカーサー草案は、帝国議会にかけられて審議・修正された上で、公布された。

 

3 聖書眼鏡3 帝国と属州・・・・マタイ2:1-8、ヨハネ11:49,50

(1)属州エリートは帝国のために政治をする

 リチャード・ボウカム『イエス入門』(新教出版社2013年)に次の一節。

「帝国はなによりもローマ人と彼らを支える属州のエリートたちの繁栄のために存在していたという事実を。ローマはたいてい地方のエリート支配者たちと共同で属州を統治した。したがって、ローマがユダヤ地方で大祭司とその議会の協力を求めたのは自然ななりゆきだった。」(p39)

 

(2)日米地位協定

 戦後GHQが駐屯していた時代の日本の政治体制は1世紀のローマ帝国下のイスラエルの状況に似ています。ピラトの位置にマッカーサーがおり、ヘロデ大王の位置に天皇がおり、サンヒドリンの位置に日本政府。実は、国民の目には隠されてきましたが、現代に至るまでこの構造は同じ。

 日米地位協定(1960年~):日本全土は潜在的に米国の軍事基地・米軍基地の無期限使用・米国軍人と軍人家族は治外法権。現在も横田空域(関東甲信越上空)の制空権は米軍にある[ 前泊博盛『本当は憲法より大切な「日米地位協定入門」』(創元社、2013年)を参照。]。日米合同委員会は、日米地位協定の実施に関する協議機関。

 郵政民営化原発政策・TPP・集団的自衛権行使といった政策は、日本国民のためでなく、米国の「年次改革要望書」に従って進められて来た。

 

4 現在:グローバリズムによる「国民国家」の崩壊と「戦後レジームからの脱却」の矛盾

(1)大企業の無国籍化

(2)第一次・第二次安倍政権「戦後レジームからの脱却」=「戦前レジームへの回帰」

 

結び

 ①預言者として、みことばの眼鏡と歴史の眼鏡で国家の動向を見抜く。

 ②祭司として、何よりもまず為政者たちのためにとりなし祈る。

(1テモテ2:1,2)

 ③王として、参政権を行使する。

拙著『新・神を愛するための神学講座』(地引網出版)の第二十章「教会と俗権」を参照。