今日の日本社会の問題点とその原因について少し考えて見ました。
政府は、これまでウソの統計に基づいて「実質賃金は上昇している。アベノミクスは成功している」と言ってきました。しかし、実質賃金は、1997年を100とすると、2016年現在で、スウェーデンは138.4、オーストラリアは131.8、フランスは126.4、英国125.3、ドイツ116.3、米国115.3と先進諸国は軒並み上昇している中で、日本の実質賃金だけは89.7と一割下がっています。他国も下がっていれば世界的傾向と言えましょうが、日本だけとなると失政のせいです。物価は上がり、賃金は下がっているのですから庶民の生活が苦しく、いつまでたっても国内需要が伸びないのは当たり前の話です。政府は消費が伸びないと嘆くのですが、賃金を一割も減らしておいて、ものを買えといっても無理です。繁盛するのは百均コーナーとリサイクルショップばかりです。
では、なぜ実質賃金は下がっているのでしょうか。景気が悪くて、大企業がもうかっていないからでしょうか?そんなことはありません。大企業は史上空前の内部留保(たくわえ)を、税金のかからない外国にしています。実質賃金が下がっているわけは単純なことで、大企業が労働者に本来支払うべき賃金をを払っていないからです。どのようにして賃金をカットしているのかといえば、社員の多くを派遣社員で賄うことによってです。
政府は少子化問題を嘆いて、担当大臣まで立てていますが、少子化は当たり前のことです。普通、派遣社員では結婚できず、結婚しても子供を何人も育てられないと考えるからです。
日本は、ほんの少し前まで一億総中流社会などと言われ、庶民もまじめに働けば、それなりの生活を営み、子どもたちを育て、一生に一回はマイホームを建てることができました。でも、現在、派遣社員生活では、そんなことは夢のまた夢です。総中流社会はあっという間に崩壊してごく一部の富裕層と、大多数の貧困層からなる格差社会となってしまいました。
では企業はなぜ労働者を正社員として雇わず派遣社員、パート従業員で雇うようになったのでしょうか。かつて人情があった経営者が、強欲な悪人に変化したのでしょうか。いいえ。大企業の経営者は、もともと昔から強欲なのです。いや大企業の経営者だけでなく、人間はみな自分・自社の利益しか考えられない利己的性質(罪)を持つ者です。では、なぜかつて企業経営者は派遣社員を使わずに、労働者を正規で雇っていたかといえば、それは、政府が労働者派遣を相当厳しく規制していたからです。政府がその規制を撤廃してしまったので、利益最優先を本能としている企業は、これに飛びついたのです。なにしろ派遣社員にすれば同じ仕事をさせて人件費を半分に減額できてしまうからです。
では、政府はなぜ労働者派遣の規制を撤廃したのでしょうか。それは、政府の中に労働者派遣規制を撤廃せよと主張する米国自由至上主義経済仕込みの、ある経済学者がいたからです。その人物はいま日本最大の派遣会社の社長となっています。それはともかく、結局、労働者派遣の規制を撤廃したことが、現在の諸問題の原因です。まとめてみます。
政府が労働者派遣規制の撤廃した⇒企業は人件費節約のため労働者の多くを派遣社員で賄うことにした⇒庶民は貧しくなった⇒若者は結婚育児ができなくなった⇒少子化。また、庶民は貧しくなった⇒国内消費はいつまでも伸びず慢性不景気である。
ただ現在の不景気には、通常の不景気と違って雇用はあるという特徴があり、ニュースで見ると、若い人が「アベノミクスのお陰て、就職できました。」と言っているのを聞きました。でもこれはアベノミクスのお陰でなくて、単に、この時期、ベビーブーム世代の大量の定年退職と、少子化のせいで労働力が急激に不足しているからにすぎません。
それはともかく、大多数の貧困化・結婚できないこと・少子化・国内慢性不景気の原因は、労働者派遣規制撤廃なのですから、この失策をただすほか解決策はないでしょう。