苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

徴兵制は社会を破壊する

 以前に書いた記事ですが、最近、徴兵制ということが話題になっているので再掲載しておきます。

 現代の軍隊というものは、国体を守るためには勇んで殺人や破壊活動ができるように、特殊な洗脳を施された人々の組織である。米国ウェストポイント陸軍士官学校教授デーヴ・グロスマンが『戦争における「人殺し」の心理学』(ちくま学芸文庫)に述べるところによると、第二次大戦中「敵との遭遇戦に際して、火線に並ぶ兵士100人のうち、平均してわずか15人から20人しか自分の武器を使っていなかった」ことが調査の結果わかったという。15パーセントから20パーセントの兵士しか敵に向かって発砲せず、80〜85パーセントの兵士たちは空や地面に向けて撃っていたのである。彼らはもっとも危険な任務にもあえて就くような勇敢な兵士だが、とにかく敵に向かっては発砲しなかったという。
 それで、グロスマンは「平均的かつ健全な者でも、同胞たる人間を殺すことに対して、ふだんは気づかないながら内面にはやはり抵抗感を抱えているのである。その抵抗感のゆえに、義務を免れる道さえあれば、なんとか敵の生命を奪うのを避けようとする。いざという瞬間に、兵士は良心的兵役拒否者となるのである。」と結論する。さらに調べれば、殺人に適性がある兵士はどの国によらずわずか2パーセント、つまり、50人に1人しかいないことがわかったという。98パーセントの人間には殺人に適性がないのである。殺人に適性がある人というのは妙な言い方だが、それはグロスマンに言わせれば羊の群れのなかの勇敢な牧羊犬のような存在で、彼らは戦って敵の生命を奪っても心的外傷を受けないという。

 米国陸軍は、これでは非効率的だと考えて訓練のしかたを特殊な洗脳的プログラムに変えた。人を殺すことについて抵抗感・良心の呵責を感じない兵士を養成してベトナム戦争に送り込んで、米陸軍は15パーセントの敵への発砲率を90パーセントに引き上げることに成功した。だが、その結果どういうことになったか。そもそも殺人適性のない大多数の人々(羊たち)が人殺しをしたために、彼らは深い心的外傷を抱えてしまったのである。太平洋戦争後には帰還兵は社会問題にならなかったが、ベトナム以後、米軍の帰還兵の精神疾患・家庭崩壊・社会的不適応・凶悪犯罪・自殺が社会問題となっているのには、このような背景がある。

 アフガン、イラクの戦役からの米国帰還兵たちは、年間8000人、毎日22人が自殺しています。たとえ、地球の裏に出かけて行う戦争であっても、それは内地に跳ね返ってくるのです。