苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

『私は山に向かって目を上げるー信州南佐久における宣教と教会開拓ー』

 5月末に出版された『私は山に向かって目を上げるー信州南佐久における宣教と教会開拓』は、アマゾンのキリスト教神学売れ筋ランキングに何度か取り上げられていますから、多くの読者を得ているようで感謝しています。今回「はじめに」の箇所を紹介しておきます。
 読み返してみて自分でいうのもなんですが、今も生きて働かれる主を証しする本としても、聖書的な伝道についての論考としても、開拓伝道、地方伝道を志す方たちへの励ましの本としても、面白いと思います。信州小諸にいるまだクリスチャンでない義兄にも贈ったら、「面白い」と何度か電話をもらいました。

 

はじめに

  一九九四年三月末、私たち家族は東京都練馬区から長野県南佐久郡に開拓伝道するために小海町の借家に移り住みました。家族は私たち夫婦、小学一年生の長男、生後三か月の長女、そして前年の秋口神戸から東京に来て一緒に暮らしていた私の病身の母でした。その後カタツムリの散歩のような伝道でしたが、キリストの福音によって一人二人と主の選びの羊が呼び出されて小さな群れができ、二〇〇一年末にはJR小海駅のすぐそばの小高い丘の上に美しい会堂が建ち、さらに十五年間、南佐久郡全域の布教と教会形成に励みました。そして二〇一六年春、新しい使命を受けた私は、後任の牧師家族を迎えて、北海道苫小牧に転じました。二十二年間の奉仕でした。

 二〇二一年十一月末に、練馬でも小海でもお世話になったKDK(国内開拓伝道会)セミナーで、南佐久郡開拓伝道について話すことを求められました。華々しくもない報告でしたが、かえってそれが良かったのか、多くの「励まされた」というお言葉をいただきました。そのレポートを私のホームページ「苫小牧福音教会 水草牧師のメモ」にアップしたのを地引網出版代表の谷口和一郎氏が見て、月刊『舟の右側』に「私は山に向かって目を上げる―南佐久郡開拓伝道の記録―」と題して連載することになり、それに今回いろいろなエピソードを加えたのが本書です。

 練馬の教会も宣教師と一緒に働いた開拓期の群れでしたから、開拓伝道のノウハウ本はいくつも読みましたが、正直に言えば私にとってはあまり役に立ちませんでした。なぜかと考えてみたら、それぞれの伝道者で与えられた条件があまりにも違うからです。まず遣わされた地域における人口増減、文化・歴史、経済状況、住民の年齢層、時代などことごとく異なっており、そして伝道者自身の年齢・経験・性格・賜物が違うからだと思います。

 しかし、ある年、広島で開拓伝道を経験された福音自由教会の牧師が松原湖バイブルキャンプでなさった講義からは、「ああ、教えられたなあ」と感じました。その牧師が遣わされたのは地方の大都市郊外の一戸建てベッドタウンで、団体挙げてのプロジェクトであるのに対し、私が開拓に携わった南佐久郡とはまったく条件は違ったにもかかわらず、教えられたと感じたのです。その内容は、ご自身の伝道者としての信仰と人格の形成と、師が理解する伝道と教会形成の原則に関することでした。そこで、私も前半は南佐久郡開拓に立つまでの「伝道者の形成」について書き、後半では興味深いエピソードも交えながら、私が従ってきた伝道と教会形成の原則を主な内容として書こうと思います。エピソードに登場する小海キリスト教会と地域の方たちは原則としてファーストネームで紹介することにしました。苗字の種類が限られている南佐久郡は、ファーストネームで呼び合う地域なのです。

 前著『新・神を愛するための神学講座』(地引網出版、二〇二二年)の帯に「机上の学問としての神学ではなく伝道と牧会の現場で紡ぎ出された神学」と紹介していただきました。そこで、脚注に『新・神を愛するための神学講座』の関連箇所を記しておきますので、ご参照いただければきっと役に立つと思います。

 この小さな本が、きょうも生きて働かれる宣教の主を証しし、日本列島津々浦々にまで福音が満ち、キリストの教会が建て上げられるための励ましになればと願っています。

二〇二三年三月                           著者

 

 

 

目次

推薦のことば                山口陽一

 

はじめに

Ⅰ 伝道者の形成

1 回心

 幼稚園から高校まで

 祖母の死

 回心

2 伝道者としての召し

 献身と召し

 奉仕100パーセント、学業100パーセント

 哲学に学んだこと

 勤勉と傲慢

3 存在の喜び

 「存在の喜び」

 神の子とされたこと

4 神学校で学んだこと

 三位一体論的思考

 歴史意識

5 「葦原」への志

 日本福音土着化祈祷会「葦原」

 神学教師の備え

6 宣教師スピリットと福音の核心

 ライフライン

 モーリス・ジェイコブセン宣教師

 「イエス様の十字架。痛い痛い。」

7 もものつがいを打たれて

 いかにも未熟な……

 嵐

 もものつがいを打たれて

 

Ⅱ 「葦原」にて

1 旅立ち

 「葦原」への志と三つの問い

 松原湖バイブルキャンプと地域伝道

 ふさわしい助け手

2  南佐久郡という地

 先輩に教えを乞う

 南佐久郡の地理・自然・産業・宗教(写真009)

 「信濃の国

3 黄色い十字架の立つ家

 「わたしはあなたとともにいる」

 目指す教会像を見据えて

 礼拝のかたち

 説教と教理の学び

 孤立しないこと

 一粒の麦 

4 主の宣教命令

 大宣教命令―二つの命令

 伝道の成功とは

 救いの確信と義認と聖化

 蒔く者と刈る者

5 共通恩恵と特別恩恵

 ユダヤ人にも、ギリシャ人にも

 共通恩恵の器に特別恩恵を載せて

 学校と子どもたちへの働きかけ

 山谷農場(ルビ:やまのうじょう)に協力したこと

 「十字架のことば」は愚かである

6  美しい山河と農業

 春を待つ心

 田植えの話

 農業への関心

 これは先生の松茸です

 毒キノコ事件

7 家庭集会

 主の羊は主の声に聞き従う

 家出人教会にならないように

 創造の事実が共通恩恵

8 開拓伝道の経済

 旧新約一貫する教会の経済原則

 パウロの開拓伝道の経済原則

9 婚と葬

 虎穴に入らずんば……

 世の光としての墓碑銘

 嬉しい結婚式

10 必要十分な教会

 目指した教会像

 ケーリュグマとディダケー

 役員会の形成

 子とされた恵み

 教会の交わり

11 丘の上の教会堂

 会堂の必要性

 正々堂々と

 くじ運の悪い牧師

 からだと着物

 教会堂のデザインと建築

12 主の教会

 田舎の伝道と神学

「わたしの教会を」

「通信小海」読者の会

あとがき

<付録>

『新・神を愛するための神学講座』引用聖句索引・主要語句索引