苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

2030年にガソリン車禁止?

 信州の山間地に22年間、北海道に6年間住んでいる経験からすれば、現在日本政府が打ち出している「2030年、ガソリン車禁止」というのは、雪深い地方の現実を認識していないスローガンとしか思えません。ハンガリー在住の中村満雄氏の文章に我が意を得たりというものを見つけたので、ここに写真といっしょに掲載しておきます。

「すべての車が電気だったら...
そして、吹雪の寒さの中で3時間の渋滞に巻き込まれた場合、バッテリーは完全に放電されます。
 電気自動車には基本的に暖房がないからです。
 そして、私が一晩中通りで立ち往生しているという事実、バッテリー、暖房、ワイパー、ラジオ、GPSはありません、バッテリーはずっとなくなっています。
緊急事態を呼び出して女性と子供を保護することはできますが、すべての道路がロックされており、おそらくすべてのパトカーが電気であるため、彼らは助けに来ることができません。
 そして、何千台もの車が道路を塞いでいると、誰も運転できなくなります。現場でバッテリーを充電する方法は?
 夏休みの同じ問題は、キロメートルの交通渋滞です。
電気自動車のエアコンを短時間だけオンにすることはできません。あなたのバッテリーはすぐに使い果たされるでしょう!」

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 この件でも思わされるのは、東京に住んでいると、視野が狭くなるということです。私自身かつて9年間東京に住んでいてそうでした。信州の山間地に住むようになってからのほうが、社会のこと、世界のことにアンテナを上げるようになりました。東京にいたときには自分は一千万分の一の存在で、自分の仕事、自分の生活のことしか考えないし、それ以上のことを言っても書いても誰も関心を持ってくれないだろうと感じていました。そのくせ、東京にいるので何の根拠もなく、自分は視野が広いような感じを持っていました。

 人口7000人ほどの過疎が進む町に住むようになって気づいたのは、町の人たちは町の将来について考え、町の生活を維持するために自分も労を惜しまず、また、将来のため活性化をどうするかということを考え、関わっていました。それが自分の生活と直結しているからです。たとえば、税収が少ないので、町民たちは春になれば地域の道普請、冬になれば(自分に子どもがいなくても)子供たちの通学路の雪かきに出ますし、町の将来のために何ができるだろうというような会に意見のある人たちが出るわけです。そして、それは日本の動きと直結しています。ということで、信州の小海町に住むようになって、私もただ教会のこと、伝道のことだけでなく、町のこと、国のことを聖書の観点から考えるようになったのです。東京に住んでいたときの社会とのかかわりというと、せいぜい靖国問題だけでした。当時は教団の靖国問題委員会のメンバーでしたから。

 話を、2030年ガソリン車全面禁止に戻します。この政府方針は、一つには地球温暖化の元凶としてCO2問題が背景にあることは誰もが知ることです。確かに重要な問題であることは論を待ちません。しかし、電気自動車を走らせるための電力もCO2を排出してつくるわけです。その量が、ガソリン車を走らせる場合からどれほど減らせるのか?電気自動車の場合、バッテリー製造、発電所での電力製造ということで、CO2は排出されます。

 マツダの論文によれば、日本車の場合、走行距離10万キロ程度まではガソリン車の方がCO2排出量は総合的に少なくて、それ以上になると電気自動車の方がCO2排出量が総合的に少ないということになっています(米国車、欧州車は5-6万キロで交代)。論文の表題は「電気自動車のCO2排出量はトータルで見てもガソリン車より少ない」なのですが、グラフをよく見ると、どうもそうではないようです。商用車は20万キロ30万キロ走らせるでしょうが、自家用車はそんなに走らせない人が多いでしょう。どうもガソリン車を電気自動車にすれば地球温暖化を止められるというのは、眉唾に見えるのですが、どうでしょうか?少なくとも、ガソリン車を止めたら劇的にCO2削減ができると期待していたら、それは的外れのようです。
 出典 

https://blog.evsmart.net/electric-vehicles/ev-global-life-cycle-co2-emissions-less-than-ice/

 この「2030年ガソリン車禁止」という政府方針のもう一つの背景があります。それは、人口減少に伴って電力需要が減少していくことを見越して電力会社が電力需要を拡張するために、政府や自動車業界に強力に働き掛けてきたことです。2011年2月25日、あの3.11東日本大地震の前に、日経新聞中部電力の社長が「中部電力 長期的需要低下に危機感 電気自動車とオール電化」という記事を載せていました。当時、その記事を読んだとき、ここ十年、二十年の間に電気自動車ブームになるのだろう思いましたが、その通りです。

 しかし、「2030年ガソリン車禁止」という政府発表は、それがどういう結果をもたらすのかをきちんとシミュレーションした上でのものとは思えません。いやいや政府の頭の良い人たちは、ちゃんと色々シミュレーションしているけれど、勢いをつけるために、庶民にわかりよいスローガンとするために、こうなったのでしょうか?北海道に住む者としては、ガソリン車全面禁止にしたら、生活は不可能であることを東京の政府にきちんと声を上げて伝える必要があると思います。

 

<追記2022年1月31日>
 電気自動車は、10万キロ走れば、バッテリー交換が必要になるわけで、そうしたら新規に電気自動車に乗り始めるのと同じように、CO2排出量の大きい買い物をすることになるわけです。結局、電気自動車は乗り始めから廃車にいたるまでずっと、ガソリン車よりもCO2排出量の多い乗り物ということになってしまいます。乗っている人の自己満足と電力会社の満足はあるのかもしれませんが。
 このことを電力会社からお金をもらっていない専門家は、どのように考えるのでしょう?