苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

ローマ書8章28節について(3) ともに働く

神を愛する人たち、すなわち、神のご計画にしたがって召された人たちのためには、すべてのことがともに働いて益となることを、私たちは知っています。(ローマ8:28)

 「すべてのことがともに働いて益となる」の「ともに働く」と訳されることばは、synergeoという動詞である。syn は「ともに」という意味で、ergeoは「働く」という意味である。神学用語でSynergism ということばがあり神人協働説と訳される。アウグスティヌスやルターやカルヴァンの恩寵救済主義に対して、ローマ教会のトミズムや英国国教会などが神人協働説とされる。

 「すべてのことがともに働く」というときの「すべて」とは、人生に起こりくる、出会いや別れ、喜びや悲しみ、成功や失敗などさまざまなことをさす。それらが見事に組み合わせられて、神を愛する人たちの「益」つまり、義認・聖化・栄化のために、働くということである。神の摂理の御手の見事さである。人生に起こりくるさまざまな出来事、とくに苦難は意味不明だけれど、主のもとに帰った日に、ああ、そういう意図だったのですか、とわかるのかもしれない。

 だが、ついこの頃聞いたsynergeoのもう一つの解釈としてライトが紹介しているのは、「すべてのことが神に召された人と共に働く」というものである。神のご摂理の中に、神を愛する人も用いられていくのだというのである。義認については神と人との協働ということは受け入れがたいが、聖化は信徒の自覚的な神への応答を含みつつ聖霊が進めるわざであることを思えば、そうした解釈もありえよう。彼岸主義的な福音理解を嫌い、信徒の自覚的な神の王国建設への参与を強調するライトらしい解釈である。