苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

「戦争法制」成立にあたって

 本日、憲法違反の安保関連法制が参議院においても強行採決された。安倍政権によって、戦後70年の憲法9条のもと専守防衛に徹してきたわが国のあり方は変更させられた。この法制が違憲であることは、すでに国民周知のことである。憲法の下にある権力者が、自ら憲法を踏みにじることは、国家秩序の破壊でありクーデターである。下記がわが国の権威の序列

「国民の総意」

日本国憲法

国会・最高裁・内閣

個々の国民

 正常化を目指して祈るために、この際、申命記から、国家権力の危険性と立憲主義について再再再度確認しておきたい。
 いよいよ約束の地に入ろうとするイスラエルの民に対して、神はイスラエルの民にその地でどのように国をつくり生きてゆくかを教えられた。そのなかで、権力者である王の問題について教え、警告を与えられた。

1.暴走した権力者は国のため民を売る

 王となる人は自分のために馬を多く獲ようとしてはならない。また馬を多く獲るために民をエジプトに帰らせてはならない。主はあなたがたにむかって、『この後かさねてこの道に帰ってはならない』と仰せられたからである。(申命記17章16節)

 ロバは平時の乗り物、馬は戦時の乗り物つまり兵器である。したがって、「馬を多く獲る」とは軍備増強を意味している。権力者は、ともすると軍備増強と戦争に走る習性がある。「地上で最初の権力者ニムロデ」以来、権力者はつねに強い武器をもちたいと願い支配領域の拡張を図ってきた。なぜか?権力者はヘロデ大王がそうであったように、えてして傲慢かつ臆病な霊に取り付かれるからである。
 「馬を多く獲るために民をエジプトに帰らせてはならない。」とは「王はメソポタミア方面の大国の圧迫に対処するために、エジプトとの安保条約に頼り、そのために、民を再びエジプトの奴隷としてはならない。」という意味と解される。権力者はこうした行動に走り勝ちなのである。

 わが国ではどうだったろう?先の敗戦後、1947年9月、昭和天皇ソ連の脅威に対処するため、米国国務長官あてに沖縄を軍事基地として長期占領することを希望する旨の手紙を出している(「沖縄メッセージ」)。
 ベトナム戦争では、米国の要請に応じて韓国の兵士が戦争に狩り出されて5000人が戦死した。日本は憲法九条を盾として、これを断ってきた。だが、このたびの「戦争法」によって、米国の要請に応じて、日本政府は「総合的判断によって」自衛隊の青年たちを戦争に派遣しうることを決めた。

 参照 http://d.hatena.ne.jp/koumichristchurch/20141009/p3

2.権力者は神法の下にいることを忘れるな

 17:18彼が国の王位につくようになったら、レビびとである祭司の保管する書物から、この律法の写しを一つの書物に書きしるさせ、 17:19世に生きながらえる日の間、常にそれを自分のもとに置いて読み、こうしてその神、主を恐れることを学び、この律法のすべての言葉と、これらの定めとを守って行わなければならない。 17:20そうすれば彼の心が同胞を見くだして、高ぶることなく、また戒めを離れて、右にも左にも曲ることなく、その子孫と共にイスラエルにおいて、長くその位にとどまることができるであろう。(申命記17章18−20節)

 王は、自分が律法の下に置かれていることを自覚して、つねに謙虚に国民に奉仕する心得をもたねばならない。神が権力者に剣の権能(警察権)を託された目的は、剣をもって悪と不平等を抑制し、民に奉仕することである(ローマ13章)。王が律法の下にへりくだることを心がけるなら、その国は安定し栄えることができるが、王が律法を踏みにじるなら、国は混乱し滅びてしまう。
 しかし、歴史を振り返ると、権力者たちはともすると、その剣を国民弾圧と侵略戦争のために用いるという過ちを犯してきた。絶対王政の時代のヨーロッパ諸国でも、王たちはしばしば意に沿わない人民を逮捕して処刑した。
 こうした権力の横暴を抑制するために、近代憲法が生まれてきた。憲法の役割とは、権力者の横暴から人民の自然権を守ることである。これを立憲主義という。
 申命記律法は神を直接の起源としているので、近代民主主義憲法と同一視することはできない。しかし、自然権とは創造主が人間に与えた権利を意味しているので、その内実において思想的につながる部分が大きい。 自然権の思想を典型的に表したものは、1776年のアメリカ独立宣言である。

「われわれは、自明の真理として、すべての人は平等に造られ、造物主によって、一定の奪いがたい天賦の権利を付与され、そのなかに生命、自由および幸福の追求の含まれることを信ずる」

 権力がこの自然権を侵した場合には、自然法上の抵抗権が生ずる。日本国憲法が「この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる」(11条)と宣言しているところである。(日本大百科全書自然権」)
 

3.適用

 本日2015年9月19日、衆議院に続き、参議院でも、自公政権が提出した「戦争法案」=安保関連法制が、憲法学者・歴代内閣法制局長官・元最高裁判事・長官・国民多数の声を無視して、強行採決で可決された。
 申命記の教えるところによれば、「そうすれば彼の心が同胞を見くだして、高ぶることなく、また戒めを離れて、右にも左にも曲ることなく、その子孫と共にイスラエルにおいて、長くその位にとどまることができるであろう。」の逆のことが今後起こることになる。
 私たちは以上のことを踏まえて、祭司として祈り預言者として語り、王として行動したいと思う。

<参考>

自民党 憲法関連 トンデモ発言
礒崎陽輔自民党憲法起草委員会事務局長)
  「立憲主義なんて聞いたことがない」

片山さつき参院議員)
  「天賦人権論をとるのは止めようというのが私たちの基本的考え」

安倍晋三内閣総理大臣
  「みっともない憲法ですよ、はっきり言って」

麻生太郎(副総理・元総理)
  「ナチス改憲手口を学んではどうか」

菅義偉内閣官房長官
  「国民が冷静な議論などできるのか」

石破茂(前自民党幹事長)
  「国防軍にしよう。出動を拒む兵員は死刑にしよう」
  「反対デモはテロ行為と同じ」

細田博之(元自民党幹事長)
  「憲法はただの法令だ」

西田昌司(元自民党副幹事長)
  「そもそも国民に主権があることがおかしい」
  「婚外子相続権平等の最高裁判断は非常識」

船田元(自民党憲法改正推進本部本部長代行)
  「立憲主義を守ると国が滅ぶ」
  「公益のために私有財産を没収できるようにしたい」

中谷元防衛大臣
  「憲法を安保法案に適用させる」

☆「自民改憲草案の諸問題点まとめ」(2012年4月27日)
 これは、「公益と秩序のために」すなわち国策のために、基本的人権としての表現の自由(集会・結社・出版の自由)・財産権・信教の自由を制限するとしている。
http://d.hatena.ne.jp/koumichristchurch/20130107/p1