苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

がんばれジャーナリズム・・・曾野綾子氏アパルトヘイト肯定発言の件(その1)

 曾野綾子氏が外国人労働者を受け入れるにあたって、南アフリカアパルトヘイト政策を参考にして、人種別に居住区を決めておくことが大事という趣旨の文章を産経新聞のコラムに書いたことが、海外メディアで非難の的になっています。曾野さんは安倍首相の教育行政のブレーンで、新しい道徳教科書では偉人のひとりとして取り上げられるそうですからね。安倍政権は、こういう価値観の日本人を育てようとしているのだと世界は見ています。
 ただ一部だけをとりあげて非難するのはフェアでないので、曾野さんの話の文脈も紹介します。曾野さんが言わんとするのは、<労働人口が不足する状況において老人介護のために外国人労働者を迎えなければならない状況にある。日本人と外国人労働者が仕事場を供給することは、それほど困難ではないだろう。しかし、住居を共有することは、曾野さんが南アフリカでのことを見聞したかぎりでは、非常に困難である。生活習慣があまりにもちがうから。>ということです。
 言わんとされることはわからなくはないのですが、アパルトヘイト(人種隔離政策)を肯定的にとりあげるというのは、国際的にも国内的にも常識を逸脱していると言わざるを得ないでしょう。米国で移民たちが自発的に***タウンを作ったというのと、国家が強制的に人種ごとに居住区を指定するのとはまったくちがうわけです。
   *     *      *
 それはそれとして、私が異様に感じているのは、海外のメディアでこれほど大騒ぎになっているのに、大新聞もTVも「みざる・いわざる・きかざる」を決め込んで、この件について何も取り上げていないことです。政権批判になることを恐れているのでしょう。しかし、これでは日本国民は、世界の良識から隔絶・孤立してしまうことになります。とても危険な状態です。「積極的平和主義」とかいうことで、外に向かって出て行こうというのが現政権の姿勢でありながら、国民には猿ぐつわ・耳栓・目隠しをする。これはまずいですよ。
 というわけで、ミニメディアにすぎませんが、このブログに載せました。
 下記リンクは、この問題のまとめです。

http://matome.naver.jp/odai/2142382269612273001

 また、アフリカ日本協議会から、産経新聞曾野綾子氏に対する抗議文が出されました。

産経新聞 曽野綾子さんのコラムへの抗議文


AJFは、2015年2月13日、以下の抗議文を、曽野綾子さんおよび産経新聞社・飯坂常務取締役あてに、FAXおよび郵便で送りました。


曽野綾子

産経新聞社常務取締役 飯塚浩彦様

 『産経新聞』2015年2月11日付朝刊7面に掲載された、曽野綾子氏のコラム「労働力不足と移民」は、南アフリカアパルトヘイト問題や、日本社会における多様なルーツをもつ人々の共生に関心を寄せてきた私たちにとって、看過できない内容を含んでおり、著者の曽野綾子氏およびコラムを掲載した産経新聞社に対して、ここに強く抗議いたします。

 曽野氏はコラムのなかで、高齢者介護を担う労働力不足を緩和するための移民労働者受入れについて述べるなかで、「外国人を理解するために、居住を共にするということは至難の業」であり、「もう20〜30年も前に南アフリカ共和国の実情を知って以来、私は、居住区だけは、白人、アジア人、黒人というふうに分けて住む方がいい、と思うようになった」との持論を展開しています。

 「アパルトヘイト」は現地の言葉で「隔離」を意味し、人種ごとに居住区を分けることがすべてのアパルトヘイト政策の根幹にありました。また、アパルトヘイトは、特権をもつ一部の集団が、権利を剥奪された他の集団を、必要なぶんだけ労働力として利用しつつ、居住区は別に指定して自分たちの生活空間から排除するという、労働力管理システムでもありました。移民労働者の導入にからめて「居住区を分ける」ことを提案する曽野氏の主張は、アパルトヘイトの労働力管理システムと同じです。国際社会から「人道に対する罪」と強く非難されてきたアパルトヘイトを擁護し、さらにそれを日本でも導入せよとの曽野氏の主張は言語道断であり、強く抗議いたします。このような考え方は国際社会の一員としても恥ずべきものです。

 おりしも、このコラムが掲載された2015年2月11日は、故ネルソン・マンデラ氏が釈放されて、ちょうど25年目にあたる日でした。その記念すべき日に、南アフリカの人びとが命をかけて勝ち取ったアパルトヘイトの終焉と人種差別のない社会の価値を否定するような文章が社会の公器たる新聞紙上に掲載されたことを、私たちはとても残念に思います。

 曽野綾子氏と産経新聞社には、当該コラムの撤回と、南アフリカの人々への謝罪を求めます。また、このような内容のコラムが掲載されるに至った経緯、および人権や人種差別問題に関する見解を明らかにすることを求めます。以上について、2015年2月28日までに文書でアフリカ日本協議会(AJF)へお知らせくださるようお願いいたします。また、貴社のご対応内容については他の市民団体、在日南アフリカ共和国大使館、国際機関、報道機関などへ公開するつもりであることを申し添えます。

2015年2月13日

(特活)アフリカ日本協議会
代表理事 津山直子

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