財界は「成果主義」を取り入れて「残業代ゼロ」の制度化を政府にしきりに求めている。ちまたには、残業代ゼロで働かせるという違法行為を行なっているブラック企業が横行している。だがこれは、神の目から見るならば、窃盗罪に他ならない。
イスラエルはエジプトで奴隷労働を強いられたが、電灯のない当時は、明るいうち働いて暗くなったら寝るほかなかっただろう。それを思うと、寝る時間を奪われ、しかも残業代なしで働かされる現代日本の労働者の搾取はエジプトの奴隷どころではない。
しかも、政府が「経済特区」から手始めにそれを法制化しようとしている。聖書的観点からいえば、政府は「神のしもべ」として、民に「益を与えるために」「善を勧め、悪を罰する」という仕事の道具として「剣」(法)を託されている(ローマ13章)。それなのに、その「剣」をブラック企業、ブラック財界の犯罪に手を貸すために用いるならば、もはやこの国の政府は政府の体をなしていない。
「聞きなさい。金持ちたち。あなたがたの上に迫って来る悲惨を思って泣き叫びなさい。あなたがたの富は腐っており、あなたがたの着物は虫に食われており、
あなたがたの金銀にはさびが来て、そのさびが、あなたがたを責める証言となり、あなたがたの肉を火のように食い尽くします。あなたがたは、終わりの日に財宝をたくわえました。
見なさい。あなたがたの畑の刈り入れをした労働者への未払い賃金が、叫び声をあげています。そして、取り入れをした人たちの叫び声は、万軍の主の耳に届いています。あなたがたは、地上でぜいたくに暮らし、快楽にふけり、殺される日にあたって自分の心を太らせました。」ヤコブへの手紙5章1-4節
成果主義「死を招く」 残業代ゼロ制度なら
2014年5月24日 07時09分
働いた時間の長さではなく、「成果」に応じて報酬を支払う「残業代ゼロ」制度の導入が政府の産業競争力会議で検討されている。労働時間と報酬を切り離せば、長時間労働を減らすことにもつながると強調。しかし、現状でも長時間労働を強いられながら、応分の残業代を支払われていない労働者からは「成果が出るまでさらに働かせられることになる」と不安の声が上がる。 (小林由比)
猛暑が続いた昨年八月半ばの深夜、東京都目黒区のピザ宅配店で店長を務める男性(28)=大田区=は、歩いて帰る途中で吐き気と頭痛に襲われ、救急車で運ばれた。四カ月間、深夜まで働く日が続いていた。過労と診断されたが、点滴を受けて翌朝はいつも通り出勤。「とにかく仕事に行くことしか考えられなくなっていた」
念願の正社員として昨年四月に入社。ハローワークの求人票には残業は一日最大二時間と示されていた。だが、就職後に会社からは「もっと頑張るなら」と、どれだけ働いても月五十四時間とみなし、固定残業代六万九千円余りを支払う提案があった。
疑問に思いながらも応じた後は、午前十時から少なくとも閉店の午後十一時まで働いた。店にいる正社員は自分だけで、事務処理などが終わらず日付をまたぐ日も。アルバイトには昼食休憩を一時間取らせるが、自分は仕事の合間にゼリー飲料を流し込む。滑舌が悪くなり、食事や入浴をする気力もなくなった。
残業時間は、厚生労働省が過労死ラインとする月八十時間を大幅に上回る月百四十時間以上。だが、固定残業代以上の残業代が払われたことはない。売り上げ目標に届かない店では、それさえ削られると店長仲間から聞いた。「成果報酬になれば、売り上げが達成できるまで、泊まり込んででも働くことになると思う。死ぬ人も出てくるのでは」
(中略)
産業競争力会議で制度を提案した長谷川閑史(やすちか)経済同友会代表幹事は、一般従業員に適用する場合、労使と本人の合意が前提と強調。違法な長時間労働などを強いるブラック企業に悪用されることはないとした。
しかし、若者の労働相談に乗るNPO法人「POSSE」代表の今野晴貴さん(31)は「現在でも労使協定さえ結ばず、違法にサービス残業をさせていても刑事罰を受ける会社はほとんどない」と指摘。残業代ゼロ制度が広がれば「労働者が自分の身を守る手段は何もなくなる」と批判する。
<残業代> 労働基準法は労働時間を「1日8時間・週40時間」と定める。長時間労働を抑制するため、法定労働時間を超えた時間外や休日の労働には、企業は割増賃金を支払わなければならない。
労働時間の配分を個人に委ねる制度としては、デザイナーなどの専門職や企画部門などで働く人を対象とした裁量労働制がある。労使協定で定めた時間を働いたとみなし法定労働時間の8時間を超えた分は割増賃金が支払われる。
(東京新聞)