苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

賛美歌のかんたん文語文法2 「感謝するの?しないの?」

 「ああ 感謝せん」という歌がありますが、「ああ感謝しない」って思っている人はほとんどいないでしょう。「ああ感謝しない。ああ感謝しない。」では歌う意味がありません。では、「ん」はなんでしょうか。高校教科書では推量の助動詞は「む」と教えられますが、実際にはしばしば「ん」と表記されます。ですから、「ああ 感謝せん」は、「ああ感謝しよう」という意味になるわけです。同じ例はほかにもたくさんあります。讃美歌6「来る日ごとほめ歌わん」→「来る日ごとほめ歌おう」です。「来る日ごとほめうたわない」では賛美になりませんからね。
 新聖歌89、聖歌392にもあります。「罪ゆるさんために 我にかわり イエスきみ十字架に死にたまえり」の「ん」は意志の助動詞「ん(む)」の連体形です。ですから、「罪ゆるさんために」は「罪をゆるそうということのために」という意味です。
 現代人が誤解するのは、「ん」という助動詞の意味が、古語と現代語でさかさまになってしまっているからです。古語では「ん(む)」は推量・意志の助動詞なのですが、現代語で「ん」は打消しの助動詞としてしばしば用いられます。たとえば、古語で「われ飯を食わん」というと「私は飯を食べよう」という意味ですが、現代語で「おれ昼飯は食わん」と言ったら、「おれは昼飯は食べない」ということになります。では、なぜ現代語で「ん」は打消しの助動詞になってしまったのでしょうか。それはおそらく打ち消しの助動詞「ず」の連体形「ぬ」と混同したのだろうと思います。「飯を食わぬ(人)」→「飯をくわぬ」→「飯を食わん」。(専門家の方の御意見あれば、いただきたし。)


   オオイヌノフグリ