苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

小出裕章さんの話がわかりやすく胸を打つ理由

11月12日の青森での講演「大事故からの出発」冒頭から

1.原子力発電所は湯を沸しているだけ
 原発はむずかしいことをしているわけではない。単に湯を沸かして、その湯気でタービン(羽根車)を回して、発電しているだけである。火力は石炭・石油・天然ガスで湯を沸かし、原子炉はウランで湯を沸かすというちがいだけ。原子力発電所は、たいへん効率の悪い蒸気機関である。100万キロワットの電力を作るために、300万キロワット分起こすに足る熱を起こして、200万キロワット分の熱を莫大な熱排水として捨てている。そこでは生き物は生きられない。
(筆者:たかが湯を沸かすだけのために、こんなに大掛かりで危険なこと、環境破壊的なことをする必要はないという含みのお話。・・・以前見た『東京原発』という映画では、原発を新宿西公園に造って、膨大な熱排水で東京の暖房も給湯もすればよいと都知事が言っていた。コジェネである。「原発は絶対安全」なのだから。)

2.原発は膨大な核分裂生成物を作り出す
 広島型原爆800グラムのウランが燃えて、広島の町は無くなった。しかるに、一基の原発を1年間稼動するために、1トンのウランを燃やす必要がある。ところが世界のウラン埋蔵量は石油の数分の一にすぎない貧弱なものにすぎない。
 また、一基の原発を一年間稼動すると、広島原爆の1000発分という膨大で危険極な核分裂生成物を生み出す。そこで、原発は都市には造らないことにした。電気は都会が使い、危険は田舎に押し付けることにしたのである。(筆者:小出さんは、この事実一点取り上げても、原発はなすべきことではないと主張される。)

3.原子炉は止められない
 出力100万キロワットの原子炉のばあい、300万キロワットの熱を出しているわけだが、そのうち279万キロワットは核分裂で生じるが、21万キロワットは核分裂生成物の崩壊熱で生じている。核分裂反応は制御棒を突っ込んで比較的容易に止められるが、崩壊熱は止めようがない。車なら事故を起こせばすぐに停車してエンジンを切って止まることができる。しかし、原発は事故があってもほんとうの意味では止めることができない。
 福島第一原発は、幸い地震に際して制御棒を入れて核分裂反応を止めることには一応成功した。しかし、崩壊熱は止めることができず、結局、炉心が溶け落ちてしまった。

(筆者メモ:小出助教の話は、いつ聞いても明快で説得力がある。それは氏の賜物と人柄が理由の一つであろうが、もっと大きな理由はごまかしがないからである。原発推進派の大教授たちは、危険きわまりないものを安全だと言いくるめようとするからわかりにくい。また推進派の大先生たちの話に胸を打つものがないのは、そこに損得勘定のみがあって倫理が欠落しているからである。)

窓越しに写した小海の夕景