苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

被造物のうめき‥・ラウンドアップレディ

 横浜海岸教会の牧師上山修平さんが、原子力利用について、聖書に照らして、次のように語っている。
原発における核分裂エネルギーの利用とは突き詰めれば、自然界に存在している原子に、人間が不自然な仕方で無理やり手を加えて不安定な状態にし、それがまた安定な原子に変わろうとする時に出すエネルギーを利用しようとするわざである。・・・核分裂のエネルギー利用は神の被造物の一つであるウランが呻く呻き、流す涙を人間がエネルギーとして利用しているようなものに思われて仕方がない。しかも、予期しなかったその時に同時に出す放射線に人間は苦しめられることになっているのである。聖書には、『被造物は、神の子たちが現れるのを切に待ち望んでいます(ローマ8・19)』ともある。人間が他の被造物と共に、神から与えられた状況を感謝しながら享受して生きられる世界を目指すなら、このように不自然な仕方で人間が自然に手を加えて利用しようとするやり方から早く方向転換しなければならないと思う。」(Christian Today 7月12日)
 なるほど、と思った。

 十数年前、私は遺伝子組み換え技術についても類似の問題性を感じて、朝日新聞に投書したことがある。ラウンドアップレディRoundup Readyというモンサント社が開発した大豆がある。ラウンドアップというのは、雑草を根まで枯らしてしまう強力な除草剤の名であり、レディとはladyではなくてreadyである。つまりラウンドアップに備えができている大豆という意味であろう。
 米国の地平線までつづくような広大な大豆畑で、ある人が数度にわたる除草のコストを省きたいと考えた。雑草に対して最強なラウンドアップなら一発散布すればOKだが、ラウンドアップを散布すれば当然、大豆も一緒に枯れてしまう。そこで、モンサント社ラウンドアップにも負けない大豆の開発を目指した。ラウンドアップを散布してきた土壌を調べてみると、ラウンドアップの毒性にも負けないでなお生き続けている微生物が発見された。その微生物からラウンドアップ耐性をもつDNAを取り出して、それを大豆の遺伝子のなかに組み込んでみた。すると、その大豆は最強除草剤ラウンドアップにも負けない大豆となったのである。しかしラウンドアップをたっぷり吸って育った大豆を食べても体に害はないのだろうか?
 もちろん、こんな大豆はもともとこの自然界に存在していなかった化け物である。原子力利用で生み出される放射性セシウムだとかストロンチウムだとかいった物質はもともと自然界に存在しなかったものだというのと事情が似ていなくもない。
 ところで、ラウンドアップレディという大豆の花にミツバチやチョウチョが飛んできて、花粉を運び、他のマメ科の植物にその花粉が移動するとどういうことになるか。そのマメ科の植物もまたラウンドアップに耐性をもつようになってしまう。こうしてラウンドアップにも負けないマメ科の雑草がいずれ地にはびこる。人間の思いのおよばないところで、バイオハザードは密かに自然界を侵していき、いずれそのしっぺ返しを人間が食うことになるのだろう。

 原発にせよ、遺伝子組み換えにせよ、人間の欲望のために、得たところの断片的な知識を利用して、創造主のプランを破壊する。神はたしかに人に地を耕せとお命じになったが、同時に、これを守れとおっしゃった。人間のエゴイスティックな振る舞いのゆえに、被造物はうめいているのではないか。神の子たちが、そのうめきに耳を傾けないならば、誰がそのうめきを聞き取るだろうか。

「神である【主】は人を取り、エデンの園に置き、そこを耕させ、またそこを守らせた。」(創世記2章15節)

   芙蓉