苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

中山キリスト教会、鴨居聖書教会合同修養会

 横浜にある中山キリスト教会と鴨居聖書教会の合同修養会で、聖書的観点から原発の話をしてきました。




    レジュメ 原発を聖書的観点から考える
 

第1回目    「つつしみ」

序  
1. 善悪の知識の木について
(1)文化命令と善悪の知識の木の実   創世記1:26-28 ;2:15-17 
 人の労働と文化形成は、堕落後の呪いではなく、堕落前からの神の人間に対する祝福ある命令である。ただし人は被造物の所有者でなく、神を主人とする管理者として被造物を治める任務がある。管理者としての分をわきまえる「慎み」がたいせつ。

(2)原子力利用の不可能性と罪
 自然を利用し、文化を形成すること、それ自体は罪ではない。「地を従えよ」「耕させ守らせた」という文化命令への応答の一つである。しかし、その文化命令への営みにも被造物にすぎない人間としての限度がある。
第一は、核分裂によって得られる莫大なエネルギーを私たち人間は十分コントロールするすべを持っていない。
第二は、原子炉のメンテナンスは人間の能力を超えている。
第三は、「トイレなきマンション」は、将来の世代と被造物に対する無責任である。
第四は、原発を、地震国で利用するのは技術的な無理がある。

2. 文明のカイン性と国家権力の問題について
(1)都市文明のカイン性  創世記4:16-26
神に背を向けたカインの一族にさまざまな文明の発明があったと聖書はしるしている。これは、何を意味しているのか。文明は、人間にとって神の代用品、偶像であった。

(2)国家権力と技術文明
 創世記10章、11章。「最初の権力者ニムロデ」の活動地域がシヌアルの地であり、ここにバベルの塔が築かれた。バベルの塔は、権力の傲慢の象徴である。権力者は当時の高度な技術による巨大建築によって神の前に傲慢の罪を犯した。
 原発は権力によって国策として進められてきた。聖書は国家権力に、悪魔の影響があると教えている(ルカ4:6、黙示13:2)。国家は伝統的に「剣の権能」と呼ばれ、ヴェーバー社会学的表現をもっていえば「暴力装置を備えた権威」である。暴力(武器)を背景として合法的に悪を抑制する務めを持つ(ローマ13章)。だが国家権力は傲慢になると、すべてを支配したいという自己崇拝の傾向がある。(黙示録13章)。
 わが国が潜在的核兵器保有国であるためであると岸信介は公言したし、中曽根康弘科学技術庁長官時代に核武装について秘密裏に調査・検討したと述べている。権力者はより強力な武器を欲し、そのために原発が国策として進められてきた。電力供給という観点からだけでは、不合理で使用するに値しない原発という技術にあくまでも国家が執着しつづけているのは、核兵器への執着のゆえであろう。

(3)都市と過疎地の問題・差別の問題・・・原発には不正義がともなう
  主イエスは、神を愛することと隣人を愛することは密接不可分だと教えられた。原発の維持管理という、生命と引き換えに行なわれる危険な現場には、貧しい労働者層が使われる。また、都市生活者のために田舎が被曝することをよしとしている。

3.原発マモニズムと数々のウソ  マタイ6:22-34、ヤコブ1:14,15

一基4000万円〜6000万円という巨大プロジェクトの利権にむらがる「原発ムラ」の人々が原発を推進してきた。ここにはマモンの問題がある。マモンという偶像が、どれほど知性を曇らせ偽りだらけにするのかという実例を、我々は原発問題にまざまざと見せ付けられている。マモンの問題が、実は、原発以上にもっとも深い問題だとも思える。

(1) 原発がなければ電気は足りないというウソ
 原発を動かすために、火力を48パーセントの稼働率に抑えている。火力を70パーセントほどの稼働率にすれば、原発はすべて止めても大丈夫なほど設備容量はある。
 
(2) 原発は一番安価なエネルギーだというウソ
原発設置・発電のコスト 大島堅一氏(立命館大学国際関係学部教授)の文章の要約。
http://www.videonews.com/on-demand/521530/001844.php
 原発の商用利用が始まった1970年以降に原発にかかったコストの実績値を計算すれば、電力会社にとっては「原発は一番安い」が、利用者にとっては「原発は一番高い」。
 1970年〜2007年の約40年間について、実際に発電にかかったコストを、税金という国民負担についても合算すれば、1キロワット時あたりのコストは、原子力10.68円、火力9.90円、水力7.26円。事故のためのコスト、廃棄物処理のコスト、廃炉のコストを入れればさらに高くなる。

福島第一原発廃炉のコストは7兆4700億円
http://eco.nikkeibp.co.jp/article/report/20110509/106467/?P=1

(3) 「M9の未曾有の地震だったから仕方ない」というウソ
 福島第一が経験した揺れ550ガルは、阪神大震災880ガルに比べれば小さいが、それえも福島第一原発津波が来る前に揺れによって破綻していた。それは、コストを惜しんでなすべき備えをしていなかったから。

(4)「原発は地球環境にやさしい」というウソ
54基の原発から毎日捨てられる熱を合計すると、ほぼ1億キロワット=広島型原爆100発分の熱。海洋によからぬ影響を及ぼしている。

(5)「福島第一原発の原子炉は揺れには耐えたが、津波でやられた」というウソ
 3月11日の地震直後、津波が来るまえに、福島第一原発の1号機の原子炉圧力容器に出入りする管のうち(おそらく再循環系)が破断し、そこから冷却材(水)が噴出した。そのため、12日午前2時45分1号機格納容器の圧力は急上昇して8.4気圧になっている。

(6)「原発には将来性がある」というウソ
化石燃料の埋蔵量をカロリー計算で比較すれば、ウランの埋蔵量は石油の数分の一、石炭の数百分の一にすぎない。http://www.avionnet.info/wadai/110321.html
 また、ウランを60倍に活用する高速増殖炉の夢は終わった。

(7)偽預言者たち   エレミヤ6:13,14 大新聞・TV局・大学教授までもが・・・。

6 今後の電力についての見通し
(1) 地震活動期の日本列島では、まもなく関東大震災、東海・東南海・南海(静岡〜四国)の巨大地震が来る。同時に、列島のあちこちで直下型地震が頻発する。
(2) 電力需要は人口減少とともに、実は長期低落傾向にあるので、電力会社はオール電化と電気自動車キャンペーンを展開してきた。これをやめれば、電力の無駄遣いはなくなる。
(3) 原発の必要性をPRするために48%稼動に抑制してきた火力をふやせば電力は足りる
(4) 夏の電力消費ピーク時とは、三日間ほどで、しかも午後2時から3時だけ。
(5) 原発は、まず冷温停止にし、つぎに地震対策を怠りなく講じつつ全廃にする。
(6) 風力・太陽光・太陽熱・潮汐など再生可能エネルギーがいろいろあるが、それぞれメリット・ディメリットがある。産業用として考えた場合、共通するネックは、供給の不安定性である。エネルギーを蓄えるかという技術の開発が鍵。
(7)全国原発停止スケジュール 2011年11月〜2012年
参照⇒http://pub.ne.jp/shimura/?entry_id=3850814
結び
1 科学技術の使用についても、われわれは分を弁える「つつしみ」が必要である。
  人間、文明、国家は、科学技術によって傲慢と自己崇拝に陥る傾向がある。
2 金銭崇拝(マモニズム、経済第一主義)が、理性の目をくらませ、環境を破壊し、原発を推進してきた。
3 金銭崇拝は、偽りだらけの世の中を作ってしまっている。真理を見抜く目を持つ必要がある。



2回目      地の相続人としての任務
創世記18章16−33節
1.地の相続人としてとりなし祈る祭司としての責任
主がアブラハムを地の相続人としてお選びになった。
 アブラハムは、とりなし祈った。アブラハム祈りの強力な点は、神ご自身の義を根拠とした点であった(25節)。 しかし、アブラハム祈りの弱点は、それに徹することをせず、「十人」の義をも赦しの根拠として願い出たことだった(32節)。
 キリスト者は地の相続人である。

2 放射能に負けない心とからだ
(1)放射能は体内の活性酸素を増やし、活性酸素はDNAに悪影響をおよぼす。(タバコ、大量の飲酒、過激なスポーツ、紫外線、精神的ストレスも活性酸素をふやす。)
(2)放射能の影響は、細胞分裂が盛んな時期である。胎児、少年、青年には特に被曝を避けさせる。
(3)調理方法によって放射性物質をなるべく取り除く。また、放射性物質をたくわえやすい作物と、蓄えない作物を知ること。
(4)リンゴ・ペクチンなどで放射性物質を排出すること。摂りすぎると健康のために必須の微量物質も排出してしまうので注意。
(5)活性酸素を除去する抗酸化物質を含んだ食品をとる。(ビタミンC,E,A,βカロテンなど)
(6)快活な心で活性酸素を増やさず、NK細胞を増やす。心配をイエス様にゆだねて生活すること。くよくよせず楽しく放射能対策をする。
「穏やかな心は、からだのいのち。激しい思いは骨をむしばむ。」箴言14:30
「陽気な心は健康を良くし、陰気な心は骨を枯らす。」箴言17:22
<推薦図書>
『自分と子どもを放射能から守るには』(世界文化社
土井理紗『内科医が教える放射能に負けない体の作り方』(光文社)

3 今後、列島を襲う地震原発

アンケートによれば、国民の七割以上は脱原発を望んでいるが、段階的に30年ほどかけてやめていくべきだという人々が多い。だが、その30年間に巨大地震が列島の原発を襲うだろう。別紙「日本列島の巨大地震の連動」年表 参照

(1) 日本の原発震度5までしか耐えられない
 原発は震度5までしか耐えられるように設計されておらず、震度6で重大事故になる。事実、釧路沖地震(1993年)、阪神大震災(1995年)あたりから地震の活動期にはいった日本列島では震度6、7が起こるようになって、設計どおり原発はことごとく壊れている。
 武田邦彦氏「2007年に震度6で壊れた原発は、石川県志賀原発新潟県柏崎刈羽原発。2011年に震度6で壊れた原発は、青森県東通原発宮城県女川原発福島県福島第一原発福島県福島第二原発茨城県東海第二原発。そして、地震が予想されるので止まっている原発静岡県浜岡原発。東日本(青森から石川県)の原発で、震度6に耐えた原発は皆無である!! その数、30基。壊れた原因は単純ではない。地震そのものの揺れ、津波の影響、人為的ミスなどがあるが、いずれも『震度6の揺れ』に耐えられない。」(http://takedanet.com/2011/07/post_5a8e.html

(2)段階的脱原発か、即時脱原発
  今回起きた三陸沖・宮城沖地震については、事前に30年以内に99パーセントやってくることを予測していた。
 小田原地震(1923年関東大震災)30年以内に70パーセントの確率→98パーセント。
 東海地震東海地震は311地震前でも30年以内に87パーセント。東海地震想定震源域の真ん中・真上に浜岡原発は位置している。敷地内に5本の断層が通っている。直下型のプレート境界型の巨大地震であるから、津波を待つまでもなく、原発は即座に破壊される。過去、静岡から四国まで全域で一度に起こったケースがほとんどである。
 崩れ残ったトラフが青森と茨城・千葉の太平洋側の沖にある。VHF電磁波で地震観測をしている北海道大学地震火山研究観測センターの森谷武男氏は、今年12月から来年1月にかけて、再びM9の地震が千葉東方沖で起こり、断層が正断層のばあいには大津波が発生する可能性があると。http://nanako.sci.hokudai.ac.jp/~moriya/M9.htm
 日本海側を見れば、列島の地震の巣のひとつである新潟には、柏崎刈羽原発
若狭湾敦賀湾には14基の原発。福井は先の戦後混乱期の1948年に大きな直下型地震に襲われて甚大な被害を出した。敦賀原発の3つの原発活断層の真上にある。
 四国愛媛県伊方原発中央構造線のほぼ真上。30年、40年かけて「段階的脱原発」などとのんきなことを言っているが、その前に第二、第三の原発破綻が起こってしまう。

結論
1 真相を知ること 大企業と政府と米国の影響を強く受けている大新聞とTV局の情報のみでは、真相は知りえない。信用できる情報源を得ること。たとえば・・ 小出裕章氏の著書、関連サイトhttp://hiroakikoide.wordpress.com/ 原子力資料情報室http://www.cnic.jp/よくわかる原子力http://www.nuketext.org/mondaiten_setsuden.html
2 電力供給について。
 まず、節電。オール電化とか電気自動車キャンペーンをやめる。節電技術を総動員する。
 火力を順次再稼動にむけて行けば、とりあえず停電にはならない。同時に再生可能エネルギーの開発。
3 福島第一原発については、廃炉にいたるまでの管理がたいせつ。実情からいえば、溶け落ちた燃料を回収することは不可能なので、結局、「石棺」にするほかないであろう。
4 私たちの地の相続人としての責任
①祭司としてとりなし祈ること  創世記18:17−19
預言者として権力者に適切に発言する責任。