今後、わが国で原発の新設は非常に困難になる。そこで、日本の原発を外国に売りつけようというのが、政府の成長戦略である。自国で使えないような危険物を、外国に売りつけるとは信義にもとることである。ベトナム、タイ、インド、トルコがその輸出先候補であるが、ベトナムへの輸出はすでに決定したと報道されている。トルコは日本と同様、プレート境界にある地震国である。タイにしても今年3月26日には北部で大きな地震を経験して、百人近く死者が出ている。地震が少ないという印象のあるインドでも、2001年にはインド西部でM7.7の大地震を経験し死者2万人余を出している。ベトナムでも50年に1回はM6〜7クラスの地震が起こるそうで、この100年でM6クラスは32回、M7クラスは3回も起きているという。
強欲な原発産業とこれに癒着した政府は、自国を汚すだけでは飽き足りず、世界をも汚そうというのである。とんでもないことである。こういう不誠実なことをすれば、日本は友国を滅ぼしてしまうことになる。親切そうなことを言って、原発を他国に売ることは、「元気がでるよ」と言って覚せい剤をすすめる売人みたいなものだ。
政府と東電は今回の地震の揺れに日本の原発は耐えることができたが、今回は津波にやられたという虚偽の宣伝をしてきた。事実は、津波が来る前に耐震強度が最高レベルで絶対に壊れないと豪語していた圧力容器あるいは圧力容器につながる配管が破損して、水が格納容器内に噴出して、燃料棒が露出しメルトダウンしていた。その決定的事実をひた隠しにして、原発を売りつけているのである。ベトナムでの原発については、高さ15メートルの防波堤を造るというが、津波が来なくても、400ガル程度の揺れだけで日本の原発は壊れるのだ。
しかも、当ブログで何度か書いたように、ウランはカロリー計算でいえば埋蔵量が石油の数分の一にすぎないたいへん貧弱な資源にすぎないし、処分しようのない放射性廃棄物はその国の経済を長年にわたって圧迫し、その国民を危険の中に置き続けることになる。原子力発電にはまるで将来性がないのである。莫大なお金をだして原発を造って、かりに事故なく数十年運転しても、その先はないし、廃炉のためには莫大な費用が必要となる。しかも、もしいったん事故が起きれば、大地も水も空気も海も汚れて、そこに暮らすこともできなくなってしまう。
これらの国々が化石資源に乏しくエネルギー自給率が低いことを気にしているなら、むしろ、風力発電や太陽熱発電を検討されたほうがよいと思う。日本は風力発電については、ベアリング技術をはじめとして世界水準の実績がある。また太陽熱発電は、陽光に恵まれた国には向いている。こういうことは、例のごとく、独り言を言っていてもしかたないので、官邸と各駐日大使館にメールをした。
太陽熱発電所 タワー型