先に、フランスのル・モンド12月8日号に、原発事故調査委員会が、今回の事故は津波が来る前に、地震で起こっていたということを26日には発表する予定であるという報道がされたことを、当ブログに掲載した。
http://d.hatena.ne.jp/koumichristchurch/20111213/p2
津波でやられようと、地震でやられようと、原発が壊れたことにはちがいがないではないかと思われるむきもあろうかと思うが、実際には大きな違いがある。あれほどの津波が原発を襲うという事態は、たしかにめったにないことであるが、あの程度の揺れが各地の原発を襲うことはままあることだからである。もし、あの程度の揺れだけで原発が過酷事故を起こしたのだとすれば、電力会社も政府も、この地震列島にあるすべての原発を稼働すること自体が危険極まりない行為であると認めざるを得ないからである。
だから、これまで東電と政府はあくまでも今回の原発事故は津波による全電源喪失が原因だといって、原発は地震の揺れには耐えたのだと言い続けてきた。
ところが、事故調査委員会は、今回の原発事故は津波以前に地震によって原子炉が壊れたことによると発表しようとしている、とル・モンドに事故調査委員会の委員が語ったのである。
もっともこの知見自体は、別に今になって初めて出てきたことではなく、事故の直後から田中光彦氏が格納容器の気圧の急上昇という事態の分析によって、つきとめていたことだった。事故直後、原子炉格納容器の気圧が急上昇したということは、格納容器内の原子炉の配管の溶接部分が破断してそこから原子炉内のものが漏れ出ていると解される。もともと、原子炉の再循環系の配管には重量のポンプがぶら下がっているので地震によって激しく揺らされれば破断する危険性が高いことは、専門家たちから指摘されていた。
今回の事故は、起こるべくして起こったことであり、かつ、この弱点は福島第一原発だけでなく、全国すべての原発に共通した点であることが、深刻なのである。岩波の「世界」の4月号だったと思うが、に、田中氏、後藤氏の福島第一原発事故に関する論文が記されている。
というわけで、12月26日の事故調査委員会の発表で、「原子炉は津波が来る前に地震で壊れた」と発表される予定だった。ところが、である。昨日のTBSニュースを見て驚いた。「地震による重要な配管が壊れたことは、現在のところ確認できていない」というのである。そうして、津波が来たこと、事故後の対応が不適切であったことが事故原因のすべてであるかのような説明がされていた。つまり、津波対策をして、事故に適切に対応できるように訓練すれば、原発を継続することに問題はないと、またも、国民をたぶらかそうとしているとしか思われない。
しかも、事故調査委員会は「現在のところ確認できていない」という逃げ口上を言っている。何年か、何十年か後に配管が壊れていたことが確認できたときにも、事故調査委員会の発表はまちがっていなかったというためのつまらん布石である。今は事故で目視しようがないのだから、「確認できない」のはあたりまえなのだ。
事故調査委員会に、また、どこからか圧力がかかったのだろうか。海外向けには真実、国民向けにはウソをいうというのは、いつものパターンである。情けない。