2月28日の使徒7章のステパノ殉教の記事からの説教の余禄。
キリストの福音を拒んで、今まさに自分を殺そうとしているサンヒドリン議員たちを前にして、ステパノはどのような心境だったのだろう。彼はひざまずき石で打たれながら「主よ。この罪を彼らに負わせないでください。」と叫んで死んだ。先の主の日、説教壇に立つ前、このことを思い巡らしていたら、ふと三年ほど前、ある集会でお会いした岡田明さんの話を思い出した。岡田さんは「日の丸・君が代」強制反対予防訴訟で原告として東京地裁で証言をした都立高校教諭である。
岡田さんは、「クリスチャンとしての立場からも」ということで証言を依頼されて、その原稿を公判の前夜、書いているときには、淡々とした思いだったという。ところが、いざ当日、証言台に立って語り始めると、思いがけず胸のうちに「主はこの日本の民を惜しんでおられるのだ」という熱い思いがこみ上げて、涙が止まらなかったとおっしゃった。殺意に満ちた形相で歯ぎしりをするサンヒドリンの祭司連・律法学者・長老たちを前に証言をしたステパノの胸中は、岡田さんが経験されたものと同じだったのではなかろうか。