数年前HBIに特別講義に来てくださった恩師丸山忠孝先生の紹介文がひょんなところから見つかったので、ここに掲げておきます。
丸山忠孝先生は東京都のご出身で、青年時代、杉並長老教会の小畑進先生の薫陶を受けられ、主に召されて献身し、東京基督神学校に聴講の後、1962年 東京基督神学校より派遣されて、米国、カベナント神学校、ウェストミンスター神学校卒業、イェール大学神学部卒業、プリンストン神学校卒業。その後、ジュネーブ大学神学部、宗教改革研究所で教会史・教理史を研究され、1973年 ジュネーブ大学神学部で神学博士号を授与されました。しかし、丸山先生はその後、宗教改革史の気鋭の研究者として将来を嘱望される場を後に捨てて、日本の貧しい教会に仕える神学教育のために帰国されたと小畑進先生よりうかがっております。帰国後は神学教育に挺身され、東京基督神学校の校長、東京基督教短期大学学長、東京基督教大学初代学長を歴任され、2000年その任を終えて後、現在は米国シアトルにお住まいです。
先生の代表的なご著書は、The Ecclesiology of Theodore Beza : the reform of the true Churchです。ある学術文献紹介誌で調べたところ、この本は斯界で最も広く受け入れられているベザ研究の基本的書物4冊のうちの1冊です。また、日本ではごく最近、教文館から『カルヴァンの宗教改革教会論―教理史研究』を出版されました。
私が東京基督神学校の神学生として、丸山先生のもとで学んだのは、1982年から85年の3年間です。東京基督神学校での教育は釈義神学、組織神学、歴史神学、実践神学にわたってオールラウンドにわたるものでしたが、振り返って、私にとって最も力となったのは、丸山先生の教会史でした。それは、丸山先生の透徹した教会史観と情熱のこもった講義をとおして、二千年間の教会の主のしもべたちの命をかけときに命を捨てた生涯を学んだことと、「教会と国家」という観点をしっかりと据えられたからでした。
丸山先生のおことばのうち、私の伝道者としての歩みを導いたことばを三つ紹介したいと思います。一つは、「みことば楽観主義」です。聖書の福音が正しく説教されるところに教会は生まれ育つという信仰です。一つは「説教壇から語られることばは目の前の会衆、あるいはプロテスタント教会だけでなく世界の教会に向けてのことばである」ということ。もう一つは「負け馬に賭ける」ということです。
最後に少々丸山先生にまつわる個人的思い出を申し上げます。神学校では毎年神学生たちが数チームに分かれて、夏期伝道に出かけました。私は二夏、丸山先生に同行していただきました。茨城県リーベンゼラ下館教会に出かけたときには、一週間のご奉仕の最後の晩、みなで銭湯に出かけました。その時、レスリングではありませんが、あっというまに丸山先生にバックを取られまして、「私が先生の背中を洗います」と申し上げたにもかかわらず、拒まれて先生が私の背中を流してくださいました。私にとって先生は、主のしもべとして仕えるということに、頑なまでに真剣な方です。