人生を導くことばというものがある。私にとって「負け馬に賭ける」ということばは、そういうことばだった。母校の校長だった丸山忠孝先生のことばである。実は、先生から直接聞いたわけではなく、寮の同室の先輩かすみ草のTさんが、「丸山先生が『負け馬に賭ける』と話しておられた」と紹介してくれたのだった。
どういう意味だろうと思いながらも、先生にじかにその真義をお訊ねする機会もないまま、ここまで来てしまった。たぶん若い日に米国やジュネーブの研究所で相当の研究業績を築き、将来を嘱望された教会史家であった丸山先生にとっては、欧米の神学校で研究し続ける道を捨てて、日本にできたばかりの明日どうなるかもわからない小さな神学校で教鞭をとることを選ばれたことと関係しているのであろうなどと想像した。
岐路に立つと、このことばが胸に浮かんだ。・・・こういうことばが残るのは、どうもマイナー志向なんですよね、私は。