苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

神殿崩壊の前兆か?再臨前の前兆か?

 主イエスエルサレム神殿が崩壊することを告げたことをきっかけに、弟子たちは主にその予兆について質問した。第一にその予兆は1世紀の出来事を指しているという解釈と、第二にその予兆は主の再臨前の世の終わりのことを指しているという解釈と、第三にその両方を指しているという解釈とがある。いずれの解釈が正しいのか。

 この件については、三つの福音書に並行記事があるのでまずここに掲げてみる。

 

マタイ24:1‐3

1 イエスが宮を出て行かれると、弟子たちが近寄って来て、イエスに向かって宮の建物を指し示した。
2 すると、イエスは弟子たちに言われた。「あなたがたはこれらの物すべてを見ているのですか。まことに、あなたがたに言います。ここで、どの石も崩されずに、ほかの石の上に残ることは決してありません。」

3 イエスがオリーブ山で座っておられると、弟子たちがひそかにみもとに来て言った。「お話しください。いつ、そのようなことが起こるのですか。あなたが来られ、世が終わる時のしるしは、どのようなものですか。

 

マルコ13:1-4
1 イエスが宮から出て行かれるとき、弟子の一人がイエスに言った。「先生、ご覧ください。なんとすばらしい石、なんとすばらしい建物でしょう。」
2 すると、イエスは彼に言われた。「この大きな建物を見ているのですか。ここで、どの石も崩されずに、ほかの石の上に残ることは決してありません。」
3 イエスがオリーブ山で宮に向かって座っておられると、ペテロ、ヤコブヨハネ、アンデレが、ひそかにイエスに尋ねた。
4 「お話しください。いつ、そのようなことが起こるのですか。また、それらがすべて終わりに近づくときのしるしは、どのようなものですか。

 

ルカ21

5 さて、宮が美しい石や奉納物で飾られている、と何人かが話していたので、イエスは言われた。
6 「あなたがたが見ているこれらの物ですが、どの石も崩されずに、ほかの石の上に残ることのない日が、やって来ます。」
7 そこで彼らはイエスに尋ねた。「先生、それでは、いつ、そのようなことが起こるのですか。それが起こるときのしるしは、どのようなものですか。

 

 マルコ伝とルカ伝だけを見れば、「そのようなこと」「それ」がさしているのは、直前の主のことばの中のエルサレム神殿の崩壊を指していると見える。この立場の人々は、「キリストが来る」ことを告げるマルコ13:26、ルカ:21:27は再臨を指すのではなく、キリストの天における着座を意味すると解釈する。だが、キリストの着座は主が天に昇って行かれた紀元30年のことであり、エルサレム陥落は紀元70年であるから無理な解釈である。

 他方、マタイ伝の並行記事を見れば、「いつ、そのようなことが起こるのですか。あなたが来られ、世が終わる時のしるしは、どのようなものですか。」とあるから、1世紀のエルサレム神殿崩壊の前兆および、世の終わりの主の再臨の前兆について問われていることは明白であって、議論の余地はない。

 1世紀の神殿崩壊の予兆と再臨の予兆の両方が告げられたというのが、多くの人には不可解なのだろう。ここには、神の国がすでに来たが、神の国はまだ来ていないという、新約聖書における終末の啓示の基本構造が現れていると解すべきであろう。