苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

東のほうから、東の方へ

新改訳2017

11:2人々が東の方へ移動したとき、彼らはシンアルの地に平地を見つけて、そこに住んだ。

新改訳第三版

11:2 そのころ、人々は東のほうから移動して来て、シヌアルの地に平地を見つけ、そこに定住した。

 

 新改訳第三版までは、mikedemは「東のほうから」と訳されていました。邦訳聖書では、文語訳「東に」、口語訳「東に」であり、新改訳第三版「東のほうから」新共同訳「東から」、聖書協会共同訳「東の方から」と見解が分かれています。27種類の英訳聖書を開くと、「東のほうから」と訳すものが12、「東のほうへ」と訳すものが15あります。まあ、半々といったところです。

 辞書的にはBDBでは、minという前置詞の説明ではfromという訳語が筆頭にあります。

 どちらが適切か?結論からいうと第三版の「東のほうから」の方がよかったと思います。理由は二つあります。第一の理由は、2節の「彼らはシンアルの地に平地を見つけて」という表現です。これは彼らがかつて平地のない場所からやって来て、このシンアルの地で平地を見つけたのだということを意味しています。シンアルの東はイラン高原の山岳地帯であり、西は平坦なアラビア砂漠ですから、東の方から移動してきたと考えるべきでしょう。

 第二の理由は、3節に、「彼らは石の代わりにれんがを、漆喰の代わりに瀝青を用いた」とあることです。これは、彼らがもともと住んでいた地域は石材と漆喰が用いられていたことを示唆しています。漆喰の原料は石灰岩です。西側のアラビア砂漠には石材は乏しいのですが、シンアルの東側はイラン高原はごつごつの岩山で石材は豊かです。ですから、mikedemは第三版にあったように「東の方から」と訳したほうが良かったでしょう。