苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

シフラとプア

 やがて、ヨセフのことを知らない新しい王がエジプトに起こった。彼は民に言った。「見よ。イスラエルの民はわれわれよりも多く、また強い。さあ、彼らを賢く取り扱おう。彼らが多くなり、いざ戦いというときに敵側についてわれわれと戦い、この地から出て行くことがないように。」
 そこで、彼らを重い労役で苦しめようと、彼らの上に役務の監督を任命した。また、ファラオのために倉庫の町ピトムとラメセスを建てた。しかし、苦しめれば苦しめるほど、この民はますます増え広がったので、人々はイスラエルの子らに恐怖を抱くようになった。それでエジプト人は、イスラエルの子らに過酷な労働を課し、漆喰やれんが作りの激しい労働や、畑のあらゆる労働など、彼らに課す過酷なすべての労働で、彼らの生活を苦しいものにした。
 また、エジプトの王は、ヘブル人の助産婦たちに命じた。一人の名はシフラ、もう一人の名はプアであった。彼は言った。「ヘブル人の女の出産を助けるとき、産み台の上を見て、もし男の子なら、殺さなければならない。女の子なら、生かしておけ。」しかし、助産婦たちは神を恐れ、エジプトの王が命じたとおりにはしないで、男の子を生かしておいた。そこで、エジプトの王はその助産婦たちを呼んで言った。「なぜこのようなことをして、男の子を生かしておいたのか。」助産婦たちはファラオに答えた。「ヘブル人の女はエジプト人の女とは違います。彼女たちは元気で、助産婦が行く前に産んでしまうのです。」

 神はこの助産婦たちに良くしてくださった。そのため、この民は増えて非常に強くなった。助産婦たちは神を恐れたので、神は彼女たちの家を栄えさせた。

出エジプト1:8-21)

 ヨセフが宰相を務めたセム民族の征服王朝が倒れ、エジプト土着のハム系の民族主義的な新王国時代になったという歴史的背景があるようです。ファラオは前王朝ゆかりのセム系のイスラエルを警戒し、彼らを弾圧する政策をとります。すなわち苦役を重くしたのです。しかし、種を維持することが危機に瀕すると、その生物は必死になって子孫を残そうとするという生物学的な法則のせいでしょうか。イスラエルはますます増えました。

 そこで、ファラオは生まれてくる男児は皆殺しにせよと助産婦たちに命じました。ところが、助産婦たちは大胆にも王命に背いて、男児たちを生かしておきました。なんという勇気でしょう。「助産婦たちは神を畏れ」ていたからです。

 助産婦たちが神を畏れたので、モーセはこの世に生を享け、神のご計画が前進しました。印象深いことに、聖書記者はファラオの名は伏して、名もなき助産婦たちの名シフラとプアを聖書に記念することをよしとされたことです。主を畏れるあなたの名も、主に覚えられています。