創世記10:8-12
<新改訳第三版>
10:8 クシュはニムロデを生んだ。ニムロデは地上で最初の権力者となった。
10:9 彼は主のおかげで、力ある猟師になったので、「主のおかげで、力ある猟師ニムロデのようだ」と言われるようになった。
10:10 彼の王国の初めは、バベル、エレク、アカデであって、みな、シヌアルの地にあった。
10:11 その地から彼は、アシュルに進出し、ニネベ、レホボテ・イル、ケラフ、
10:12 およびニネベとケラフとの間のレセンを建てた。それは大きな町であった。
<新改訳2017>
8 クシュはニムロデを生んだ。ニムロデは地上で最初の勇士となった。
9 彼は主の前に力ある狩人であった。それゆえ、「主の前に力ある狩人ニムロデのように」と言われるようになった。
10 彼の王国の始まりは、バベル、ウルク、アッカド、カルネで、シンアルの地にあった。
11 その地から彼はアッシュルに進出し、ニネベ、レホボテ・イル、カルフ、
12 およびニネベとカルフの間のレセンを建てた。それは大きな町であった。
新改訳聖書2017でニムロデは地上で最初の「勇士」と変更された。第三版までは「権力者」と訳されていたのだが。原語はギッボールであり、確かにmighty manだが、「勇士」と訳して誤りではないが、「権力者」のほうが適切だったのではないか。理由は三つある。
第一に、猛獣をやっつける勇士であれば、ニムロデ以前にもいたであろうから、「最初の勇士」というのはよくわからない。
第二に、10節から12節へのニムロデの王国の版図をものすごい勢いで拡張していく行動をみるならば、これは単なる勇士についての記述ではなく、明らかに「権力者」としての振る舞いである。10節には「彼の王国」とある。
第三に、次の11章には、ニムロデ本人か彼の後継者かが傲慢になりシンアルの地にバベルの塔を築こうとして、神によってさばかれたことを見れば、ここは権力の問題性を扱っている個所である。したがって、ここは「勇士」ではなく「権力者」と訳すのが適切である。
それにしても、最初の権力者ニムロデについての記述のうちに、ほとんど余すところなく、その本性が表されているところを見ると、つくづく聖書という書物はすごい。
なぜ新改訳2017が「権力者」を「勇士」に改めたのかはよくわからないが、新しい翻訳は「勇士」を採用する傾向があるので、それらに倣ったのかもしれない。文語訳は「権力ある者」と、口語訳は「権力者」と訳していたが、新共同訳、聖書協会共同訳は「勇士」という訳語を採用している。だが翻訳の趨勢よりも、聖書の文脈をたいせつに訳語を選んで欲しかったところである。