苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

戦争法案というレッテルはまったく正しい

「米国の戦争に巻き込まれると不安をお持ちの方に申し上げる。絶対にありえない。日本が武力を行使するのは日本国民を守るためだ。“戦争法案”といった無責任なレッテル貼りはまったくの誤りだ」

 5月14日、安全保障の関連法案が閣議決定されたのを受け、安倍晋三首相が記者会見で語ったことばである。「放射能は完全ブロック」宣言に匹敵するデタラメである。
 米国が世界中で行う戦争に自衛隊が参戦するための法整備が、どうして日本が戦争に巻き込まれることはないといえるのか? 国会審議で首相は「主体的に参戦するのだから、受動的に『巻き込まれる』のではない」とでも屁理屈を言うつもりなのかなあと推測していたら、そうではなかった。首相は国会答弁で、「戦闘が始まったらさっさと逃げ出せばよいのだから、巻き込まれないのだ。」という趣旨のことを語っていた。またも嘘である。兵站を担当する自衛隊が戦闘が現場で始まったら、さっさと逃げ出せるなんて本気で思っているのだろうか?「後方支援」などという造語で逃げ出せるイメージを作り上げているけれど、戦国時代ならともかく現代の戦争には前も後ろもありはしない。
 さらに、「戦争に巻き込まれることはありえない」ということはありえないことが明白なのは、機雷掃海の件である。戦時下の機雷掃海は戦闘行為そのものだからだ。首相はしばしば石油タンカーのシーレーンの機雷掃海をすべきだと主張する。話題にされるのはホルムズ海峡。だが、この海峡は東半分はイラン領、西半分はオマーン領である。機雷を敷設する国にとっては、機雷はいわば城壁であるから、これを撤去することは城壁を破壊攻撃することを意味する。当然、機雷掃海にあたる自衛艦には砲弾やミサイルや魚雷による「反撃」が想定される。機雷掃海はゴミ拾いではない。機雷掃海は戦闘行為なのである。今、「平和安全法案」によって、首相が自衛隊にさせようとしていることは、戦闘行為・侵略行為そのものである。
 米国の戦争に巻き込まれないと断言する首相に申し上げる。巻き込まれないことなど絶対にありえない。日本が武力を行使するのは米国のご機嫌をとるためだ。“平和安全法案”といった無責任なレッテル貼りはまったくの誤りだ。戦争法案というレッテルはまったく正しい。
 それぞれに立場や主張に違いはあるにしても、こういう大事なことを論ずるのに、ごまかし嘘をついて、自らの法案を通そうという卑怯なやり口は、なんとしてもいただけない。