苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

家永三郎『革命思想の先駆者ー植木枝盛の人と思想』(岩波新書)

 植木枝盛に関心を持ったのは、日本国憲法の思想的起源をたどったことからである。日本国憲法は、米国が日米開戦の翌年にスタートさせた戦後占領政策研究の成果と、「戦争放棄」の発案者総理大臣幣原喜重郎と、明治以降の憲政史研究者鈴木安蔵との総合である。鈴木安蔵憲法研究会による憲法草案に盛り込んだ国民主権基本的人権尊重思想の起源は、ほぼ明治の自由民権運動における思想的指導者植木枝盛であると思われる。それは『植木枝盛選集』(岩波文庫)で実際に植木の本を読めばあきらかである。
 この選集を編んだ家永三郎が、植木の生涯と思想を紹介したのが、『革命思想の先駆者』である。一読して、家永三郎がいわゆるマルクス主義史観という枠でもって自由民権運動と植木を批評している点が、古めかしいというかドグマティックでいまひとつだった。家永によれば、自由民権運動はいわゆるブルジョア革命であって、プロレタリアート革命ではなく、そこに限界があった。植木もまたその限界の中にあったが、植木には貧者・弱者に対する同情的な視線が見られる。その点で、ブルジョア革命思想家からもう一歩進んだ思想をもっていたということが言える。そんなふうな見方を家永三郎はしている。
 以上、少しだけメモしておく。