福島第1原発:「最悪シナリオ」原子力委員長が3月に作成
右は菅直人前首相の指示で、近藤駿介内閣府原子力委員長が試算、作成した「最悪シナリオ」の強制移住地域の範囲
東京電力福島第1原発事故から2週間後の3月25日、菅直人前首相の指示で、近藤駿介内閣府原子力委員長が「最悪シナリオ」を作成し、菅氏に提出していたことが複数の関係者への取材で分かった。さらなる水素爆発や使用済み核燃料プールの燃料溶融が起きた場合、原発から半径170キロ圏内が旧ソ連チェルノブイリ原発事故(1986年)の強制移住地域の汚染レベルになると試算していた。
近藤氏が作成したのはA4判約20ページ。第1原発は、全電源喪失で冷却機能が失われ、1、3、4号機で相次いで水素爆発が起き、2号機も炉心溶融で放射性物質が放出されていた。当時、冷却作業は外部からの注水に頼り、特に懸念されたのが1535本(原子炉2基分相当)の燃料を保管する4号機の使用済み核燃料プールだった。
最悪シナリオは、1〜3号機のいずれかでさらに水素爆発が起き原発内の放射線量が上昇。余震も続いて冷却作業が長期間できなくなり、4号機プールの核燃料が全て溶融したと仮定した。原発から半径170キロ圏内で、土壌中の放射性セシウムが1平方メートルあたり148万ベクレル以上というチェルノブイリ事故の強制移住基準に達すると試算。東京都のほぼ全域や横浜市まで含めた同250キロの範囲が、避難が必要な程度に汚染されると推定した。
近藤氏は「最悪事態を想定したことで、冷却機能の多重化などの対策につながったと聞いている」と話した。菅氏は9月、毎日新聞の取材に「放射性物質が放出される事態に手をこまねいていれば、(原発から)100キロ、200キロ、300キロの範囲から全部(住民が)出なければならなくなる」と述べており、近藤氏のシナリオも根拠となったとみられる。(毎日新聞 2011年12月24日 15時00分)
この記事と、先日紹介した、もうひとつの記事をつなぎ合わせると・・・。
そのころ第1原発では1〜4号機が電源喪失で冷却機能を失った。最多の1535本(460トン)を保管する4号機の使用済み核燃料プールは沸騰。溶融すれば最悪の場合、首都圏の3000万人が避難を強いられる事態が目前だった。だが空だき直前、4号機内で起きた水素爆発の衝撃で核燃料プール横の別なプールの水が偶然、核燃料プールに流れ込み危機を免れた。
(毎日新聞の2011年12月22日「記者の目」より)
私たちがこうして生活していられるのは、人間の知恵や力によったのではない。4号機の460トンの使用済み核燃料プールが沸騰し、空焚きになる直前、今も原因がよくわかっていない爆発が起こり、その衝撃で別のプールからの水が流れ込んだことによったのである。もし、この出来事がなかったなら、上の地図の範囲は失われていた。
私たちが滅びうせなかったのは、【主】の恵みによる。
主のあわれみは尽きないからだ。 哀歌3章22節
原発再稼働をねらい、さらに、輸出までもくろんでいる経産省官僚や電力会社やメーカーや原発村民の大学教授たちは、どこかの原発で同じような事故が起こっても、きっとなんとかなると思っているらしい。どうにもなるわけがない。推進派の人々のメンタリティは、いくら戦況が悪くなっても「きっと最後は神風が吹くのだ。」と叫びながら、この国をどん底へと導いた戦時下の指導者たちとなんら変わらない。