苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

原子力発電のメリットとは?・・・マトメ

1. 電力会社にとっての原発のメリット
なぜ電力会社は4000億円〜6000億円という原発を造りたがるのでしょうか?
それは電気事業法
<電力量収入=原価(発電所建設費・燃料費・広告料など)+原価×4.4%>
だからです。減価償却の済んだ火力発電所をもっていても儲からないが、6000億円の原発を新設すれば儲かる。そしてコマーシャルやればやるほど儲かる。電気代に上乗せできますから。しかも独占企業ですから。
 そして、原発は設置にあたっても、地元説得にあたっても、莫大な税金がつぎ込まれています。あとで書くように、たしかに電力会社にとっては原発による電力は安いので、儲かるわけです。実は税金を払い電気料金を払う国民にとっては、原子力エネルギーは一番高くつくのですが。

2. 政治家にとっての原発のメリット
ものの本によれば、原発ほどの巨大プロジェクトというと、これを誘致した政治家のポケットには、3パーセントから5パーセントが入るのが常識なのだそうです。6000億円のプロジェクトだと、180億〜300億円が政治家たちの懐に入る計算になります。とんでもない話ですねえ。
http://alternativereport1.seesaa.net/article/173373289.html


3. 経済産業省官僚・文部科学省官僚にとってのメリット
 経済産業省文部科学省の幹部官僚は、電力会社とたくさんの原発関連法人、原発プラントを受注する電機・重工業業界・ゼネコンに天下ることになっています。彼らはそこに天下って数年間おつとめを果たせば、何億円という退職金を得ることができます。
http://www.maebashi-sns.jp/modules/d/diary_view.phtml?id=409943&y=2011&m=4&o=&l=30
http://gendai.net/articles/view/syakai/129621

4. 原発推進学者とその大学のメリット
東京電力は、東大に寄附講座だけでも5億円をしていました。http://www.insightnow.jp/article/6430
http://www.u-tokyo.ac.jp/res01/pdf/20110301kifu.pdf
原子力安全委員会の委員になれば、多額の収入が約束されています。
また電力会社と原発メーカーなど関連企業には、多くの大学教授たちが天下っています。<追記2011年5月19日>
 大橋弘忠氏(東大教授)の、玄海原発プルサーマル公開討論会(2005年12月25日)での発言を少し抜粋しておきます。討論相手を嘲笑する品性にもがっかりします。
大橋弘忠「我々『専門家』の間には水蒸気爆発なんてそんな事夢にも考えてない。」
大橋弘忠「プルトニウムは、飲んでも安全です」
大橋弘忠「地震なんか関係ない話」
大橋弘忠「原子力発電は皆さんが考えるよりずっと安全。格納容器が破損するということは物理的に考えられない。」
大橋弘忠「格納容器が壊れるのは1億年に1回の確率だからそんな事考えなくても良い」
大橋弘忠「軽水炉でチェルノブリ事故のような事故は、ありえない。危険と指摘する団体は資料を捏造している。
 格納容器破損は1億年に一度おこるかどうかという危険レベルで大隕石衝突で地球滅亡とおなじ危険レベル。」



5.原発メーカー(三菱・東芝・日立)とゼネコンのメリット
原発という巨大なプロジェクトは、メーカーにとっては当然莫大な儲けを約束しますし、施工するゼネコンにとっても巨額の儲けを約束します。なにしろ4000億〜6000億円です。

6.テレビ局・大新聞・出版社・原発推進評論家にとってのメリット
福島原発事故直後の「ナントカ生テレビ」に出演依頼を受けた評論家は、原発推進に有利な発言をしてくれるならばギャラとして500万円を提示されたそうです。電力会社全体のマスコミ対策費は毎年2000億円にのぼります。NHKのニュース番組は国によって首根っこを押さえられていますが、民放のニュース番組のほとんどは、電力会社に買収されています。マスメディアにとっては経済的メリットがあるわけです。私たちとしてはニュース番組の提供者が電力会社ではないかに注目しておく必要があります。東電がお詫びのコマーシャルをしていますが、あれは電力料金から支出されているのです。本来記者会見で頭を下げればすむ話です。
http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2011/04/1_6.html
http://www.the-journal.jp/contents/newsspiral/2011/04/post_758.html

7.原発を設置する自治体推進派の目先のメリット・長期のデメリット
 原発を設置すると、その地元自治体には政府から10億円単位の巨額の資金が交付金として投入されます。また、原発とその関連によって雇用が創出されます。しかし、原発を受け入れた町は、こうしたジャブジャブ濡れ手にあわのお金をもらうことによって、交付金依存症になってしまいます。その症状は覚せい剤の依存症にそっくりで、覚せい剤をやることで、当面気持ちよくなるのですが、そのうち覚せい剤なしには暮らせなくなってしまい、覚せい剤の虜になり、最後には覚せい剤で滅びてしまいます。交付金ということばを「覚せい剤」のところに代入してください。

8.ヤクザにとってのメリット
 原子力安全委員長の斑目氏がいうとおり、原発設置反対派を封じ込めるために、電力会社は原発設置自治体にカネをばら撒きますが、それでも強固に反対する人々のことは、ヤクザを使って封じ込めてきました。原発は、こうしたヤクザの収入源となります。石川県珠洲原発を建設するにあたって、関西電力清水建設は、山口組暴力団組長に土地買収に協力することを求め、その見返りとして組長から30億円を要求されていました。原発用地取得には、関西電力清水建設、不動産ブローカー、暴力団組長、森善朗元首相が絡んでいました(鎌田慧原発列島を行く」p109)。

追記2011年6月17日>裁判官にとってのメリット
 筆者が一番がっかりして呆れたのは、伊方原発訴訟で原発は安全だと被告を勝訴させた最高裁判事味村治が、原発メーカー東芝に天下っていたという事実を知ったときでした。ここまで腐っているとは。


9.宣伝されている、3つ偽りのメリット
a.原発は安いエネルギーであるというウソ。
 発電にかかるコストとしてよく電力会社が出す数値は、たとえば04年に電気事業者連合会が経産省の審議会に提出した資料では、1キロワット時あたり、水力(揚水発電を除く一般水力)は11.9円、石油10.7円、天然ガス6.2円、石炭5.7円、そして原子力は5.3円としています。
 しかし、これには嘘です。ここには国からの財政支出(税金)が含まれていませんから。技術開発費や立地対策費、交付金が税金から出されています。1970年〜2007年の約40年間について、実際に発電にかかったコストを、財政支出の国民負担についても合算して計算すれば、1キロワット時あたりのコストは、原子力10.68円、火力9.90円、水力7.26円と、原子力はもっとも高いのです。原子力は電力会社にとっては確かに安いのですが、国民にとっては一番高いのです。
 また原発廃炉するのに日立見解で30年かかり(ロシアの見解では100年)、その間の冷却から廃炉にかかる費用は莫大です。また、放射性廃棄物を延々と監視し続けて行かねばなりません。低レベル放射性廃棄物は30年間、そして高レベル放射性廃棄物は100万年監視し続けなければならないそうですから、文字通り天文学的なコストがかかります。原発はもっとも危険でもっとも不潔な発電方法であるばかりでなく、もっとも高価な発電方法です。
 まして、原発はいったん福島・チェルノブイリのような大事故を起こすと、それにともなうコストはもはや一電力会社の担えるものではなくなり、結局、莫大な税金の投入か電力量の値上げになります。原発ほど、コストの高い発電方法はありません。日本経済は原発で倒れてしまいます。
http://www.greenaction-japan.org/internal/101101_oshima.pdf
http://www.videonews.com/on-demand/521530/001844.php

b.原発はクリーンで、地球温暖化防止になるというウソ。
これが嘘であることは皆知っているでしょう。たしかに発電の仕組み上、二酸化炭素がでませんが、放射能による環境汚染の被害の巨大さは、二酸化炭素の比ではないことは、今回私たちは身にしみて知ることになりました。
 また原発から排出される莫大な温排水の環境破壊についても報告されています。54基の原発から毎日捨てられる熱を合計すると、ほぼ1億キロワットすなわち広島型原爆100発分の熱です。

c.石油など化石燃料がなくなった後、原子力はずっと使える将来性があるというウソ。
 これも相当普及した根拠なき風説です。5月8日にやや詳しくメモしましたが、カロリー計算で、ウラン資源は石油に比べて数分の一、石炭に比べれば100 分の1しかありません。ウランが乏しいから、やっぱり石炭に乗り換えようというならば筋が通っていますが、原発推進派の主張は逆です。こんな危険で将来性がないものに、なぜ原発推進派はしがみつき、かつ、外国にまで売ろうとするのか。上述のようなメリットが彼らだけにはあるからでしょうね。夢の高速増殖炉は、ほんとうにはかない夢にすぎませんでした。

9.結論
 以上のように、原発には、電力会社・政治家・経済産業省文部科学省幹部官僚・御用学者・原発メーカー・ゼネコン(土建屋)・原発設置自治体の推進派・マスコミ・ヤクザ、そして最高裁判事たち、つまり、いわゆる原発ムラの住民にとって、数々のメリットがあります。逆に言えば、原発村の住民はこれで食べているわけで、無くなったら困りますから、「原発は安全です」といい続けるのです。
 原発が客観的に安全であるかどうかは、原発村の住民たちに聞いてもわかるわけがありません。しかし、現状では原発の安全についての責任を負っているのは、経済産業省の官僚である原子力安全保安院です。

 しかし、この村に属していない国民一般にとっては、原発はディメリットが大きすぎます。M8.4の東海地震の震央にある浜岡原発にせよ、若狭湾にあって関西圏の首筋に当てられた鋭利なナイフのような15基の原発群にせよ、気でも狂ったのかなんと中央構造線の真上に設置された四国の伊方原発にせよ、一つでも破綻すればその損害は大きすぎます。なにしろ、私たちはこの国に住めなくなって亡国の民となってしまうのですから。
 主イエスは言われました。「あなたがたは、神と富とに兼ね仕えることはできない。それだから、あなたがたに言っておく。何を食べようか、何を飲もうかと、自分の命のことで思いわずらい、何を着ようかと自分のからだのことで思いわずらうな。命は食物にまさり、からだは着物にまさるではないか。」(マタイ6:24,25)そうです。いのちは電気にまさるではありませんか。