苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

鉄人28号



 正月に見舞った神戸の義姉は大手術をしたので、どうなることかとずっと心配して家族で祈っていたが、四日の朝訪ねてみるとリハビリが始まっていて、その昼には点滴の管がとれて口から全粥が食べられるようになり、夕方にはことばも出るようになってきて、なんと好物の寿司まで食べるという急激な回復で、驚くやらうれしいやらの連続だった。
  翌朝、帰り際に鉄人28号の実物大モニュメントを見て来た。最近、JR新長田駅のそばに震災後遺症からの完全な復興のシンボルとしてできたという。ビルの間の道を抜けると、オーッすごい。まさしく青黒いからだに赤い帯をした鉄人が、両足を開いて力強く大地を踏みしめ、右手こぶしを握り締めて斜め上に突き出し、左こぶしは後ろにぐいっと引いて立っている。18メートルだから5,6六階建てのビルの高さの大迫力だ。近づけば近づくほど迫力が増し、足にさわると冷たい鉄の感触。
 鉄人28号と鉄腕アトムがテレビに登場したのは、1963年のことであるから、当時、筆者はまだ五歳だった。アトムと鉄人は同じロボットとはいえ、ロボット自体も時代設定もずいぶん異なっていた。アトムが活躍するのは明るい未来であり、鉄人が暴れるのは1963年当時,昭和30年代だった。ウィキで見てみたら、そもそも鉄人28号は、対米戦争が敗色濃くなったころに、大日本帝国陸軍が起死回生を期して製造されつつあった秘密兵器だったというのである。なるほど子どもの目にも、アトムよりも不気味な鉄人のほうがリアリティが感じられたわけである。
 アトムと鉄人28号の最大の違いは、アトムには正義を愛する電子頭脳が備えられているので自律的に正義のために戦うのだが、鉄人はリモコンの持ち主の言いなりになってしまうという点であった。実際、主人公正太郎くんがリモコンを悪の組織に奪われて鉄人が悪者になって大暴れしたのは子ども心にもショックだった。鉄人28号の主題歌の第二節には、次のようにある。
「ある時は正義の味方
 ある時は悪魔の手先
 いいも悪いもリモコン次第
 鉄人、鉄人、どこへ行く
 ビューンと飛んでく鉄人28号」
 「鉄人、鉄人、どこへ行く」というのであるからなんとも不安だ。おそらくこれは原水爆で脅しあう東西冷戦の中で、科学がいったいどこへ行ってしまうのか?科学によって我々自身滅ぼされてしまうのか?という不安を表現した歌なのであろう。実際、鉄人28号がテレビ・アニメに登場する前年1962年に、キューバ危機が起こっていたのである。世界はほんとうに一歩間違えばあのとき核戦争で滅びていた。
 新しい年を迎えたが、世界に平和はやってきていない。身近なところでは、昨年末には朝鮮半島北朝鮮による砲撃事件があったし、イランの核兵器製造問題もある。米国、ロシア、中国、イギリス、フランス、インド、パキスタン北朝鮮・・・と核兵器を持つ国は増えていく。そしてイスラエルが核保有国であることは公然の秘密。
 私たちはひとりの愛する身近な者の生命のために、必死になって祈りながら、もう一方で遠くの戦争で多くの生命が毎日失われていることについてはあまりにも鈍感になってしまっているのではないだろうか。鉄人28号のことを思いめぐらすうち、そんなことを考えた。(通信小海207号から)

追記>2013年12月
 2011年3月11日に大地震が東日本を襲い、福島第一原発が破たんした。鉄人、鉄人、どこへゆく?という不安が的中した出来事であり、今なお、それは進行中である。





                   ハイ。ポーズ。

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