ソクラテスは「哲学は死ぬことの練習である」と言いました。これだけ読むと、「哲学などすると、自殺したくなる」という意味なのかと誤解する人がいるでしょう。そういう意味ではありません。
ギリシャ的な死生観によれば、死とは魂が肉体から分離することです。それは、人間において時間的・空間的制約ある肉体から魂が分離して、そうした制約を受けない永遠的・超空間的なイデアの境地に入るということを意味しています。
ひるがえって、哲学とは、時空の制約を受けた現象世界の事象から、善とか正義とかいうような時空の制約を受けないイデアを見出そうとすることです。というわけで、哲学は死ぬことの練習だというわけです。
おもしろいことを考えますね。やっぱり哲学者というのは、ちょっと変わっています。