苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

原発安全神話の完全崩壊  追記あり

 筆者は3月21日に、福島第一原発の町に隣接するいわきを訪ねたが、その印象は、揺れはたいしたことなかったのだなあということだった。もちろん、信州でさえ長周期の船酔いのような横揺れを感じたのであるが、それは神戸が経験したような直下型の構造物を破壊する激しい縦揺れではなかった。
 それで、新聞報道がいうように、「揺れは想定内で原子炉圧力容器は守られたけれど、津波が想定外だった」というのは、なるほどと思ってきた。しかし、原子力資料情報室に出ておられた元原発設計者でありサイエンスライターである田中三彦氏は、東電の情報に基づいて、ごく早い段階から、1号機は津波が来る前に原子炉圧力容器の配管に損傷があったことを推理し指摘していた。NHKも4月8日にはそういう報道をしていた。田中氏の推理は岩波「世界」5月号に掲載されている。またすべての原子炉に共通する圧力容器の配管の弱点については、ずっと以前からエンジニアたちから指摘されてきたことで、それは重さ100トンの再循環ポンプが宙吊りになっている、という構造的欠陥である。
 事故から二ヶ月がたった5月15日になって、東電は津波が来るまえに、原子炉圧力容器が損傷していたことを認めて発表した。

「1号機、津波前に重要設備損傷か 原子炉建屋で高線量蒸気

 東京電力福島第1原発1号機の原子炉建屋内で東日本大震災発生当日の3月11日夜、毎時300ミリシーベルト相当の高い放射線量が検出されていたことが14日、東電関係者への取材で分かった。高い線量は原子炉の燃料の放射性物質が大量に漏れていたためとみられる。
 1号機では、津波による電源喪失によって冷却ができなくなり、原子炉圧力容器から高濃度の放射性物質を含む蒸気が漏れたとされていたが、原子炉内の圧力が高まって配管などが破損したと仮定するには、あまりに短時間で建屋内に充満したことになる。東電関係者は「地震の揺れで圧力容器や配管に損傷があったかもしれない」と、津波より前に重要設備が被害を受けていた可能性を認めた。
 第1原発の事故で東電と経済産業省原子力安全・保安院はこれまで、原子炉は揺れに耐えたが、想定外の大きさの津波に襲われたことで電源が失われ、爆発事故に至ったとの見方を示していた。
 地震による重要設備への被害がなかったことを前提に、第1原発の事故後、各地の原発では予備電源確保や防波堤設置など津波対策を強化する動きが広がっているが、原発の耐震指針についても再検討を迫られそうだ。
 関係者によると、3月11日夜、1号機の状態を確認するため作業員が原子炉建屋に入ったところ、線量計のアラームが数秒で鳴った。建屋内には高線量の蒸気が充満していたとみられ、作業員は退避。線量計の数値から放射線量は毎時300ミリシーベルト程度だったと推定される。
 この時点ではまだ、格納容器の弁を開けて内部圧力を下げる「ベント」措置は取られていなかった。1号機の炉内では11日夜から水位が低下、東電は大量注水を続けたが水位は回復せず、燃料が露出してメルトダウン(全炉心溶融)につながったとみられる。
 さらに炉心溶融により、燃料を覆う被覆管のジルコニウムという金属が水蒸気と化学反応して水素が発生、3月12日午後3時36分の原子炉建屋爆発の原因となった。
2011/05/15 02:02 【共同通信】」

 原子力発電所は、原子炉建屋はA、タービン建屋B、その他の部分Cというふうに耐震性にレベルの違いがあり、原子炉建屋の特に原子炉格納容器はぜったいに壊れないという前提で原発学者たちはものをいってきた。ところが、一般家屋さえ倒れていないような地震で、最強に造られているはずの原子炉建屋内の配管がかんたんに損傷してしまったのである。津波がなくても原発はあの揺れで致命的な事故を起こしていたのである。この地震国では、原子炉は無理だという証左である。
 それにもかかわらず、政府が電力会社に求めているのは、津波対策と電源を高所に移すことだけである。これでは役に立たない。<追記>2011年6月3日夜
 原子炉圧力容器には炉心を冷やすための冷却水が入っているが、その冷却水を循環させるために再循環系の配管がありポンプが付いている。ところが再循環系の配管は、原子炉を冷温停止して点検するときには、運動時よりも収縮するので、ポンプを固定しておくと配管が損傷してしまうので、ポンプは100tほどもあるのに宙吊りにしておかねばならない。
これが地震になると激しく揺れて、配管を破損させる危険性が原発の安全をめぐる論争では常に取り上げられてきたという。田中三彦氏は、1号機においては、再循環系の配管が破損して、冷却用の水が噴出して圧力容器内の水位が下がって、燃料棒が露出し、溶融したと述べている。
 その推論はきわめてシンプルで筋が通っている。1号機においては、自動停止前、圧力容器内炉心部の圧力は約70気圧という正常値であったろうものが、地震から12時間経過した時点で約8気圧に急降下しており、逆に、圧力容器の入っている格納容器の気圧は自動停止前から地震後に設計気圧(4気圧)からその倍の8気圧まで急上昇している。これは圧力容器に出入りしている、おそらく再循環系配管が破損して、そこから水が格納容器内に噴出したことを意味している。その結果、燃料棒は露出して溶けてしまった。<追記>2011年6月5日夜
 佐賀原発プルサーマル化に関する住民集会で、聴衆と小出裕章氏を侮辱し「プルトニウムは飲んでも大丈夫」とまでうそぶいていたことで、全国的にたいへん有名になった東大教授大橋弘忠氏の見解について、週刊現代6月11日号が紹介している。1号機の炉の問題は無視している。この期に及んで、なおウソをつき原発事故の真相を隠蔽しているとは、正真正銘の御用学者である。
「今回の事故の原因は津波だけであり、地震動はほとんど関係しない。10mを大きく超える津波は専門家も予想しなかった。津波が電源系をほとんど全滅させることや、海水冷却系の機器を流出させることも想定されていなかった。」
 津波津波による電源系喪失については、吉井議員が何年も前に警告していた。警告されながら、東電はコストをきらって「想定不適当」としたのである。そして時の自民党安倍晋三総理大臣は、訴えを握りつぶしたのである。また、原発津波が来る以前に地震で破壊されていたことは、あの東電でさえ5月15日に認めている。

1号機、津波前に重要設備損傷か 原子炉建屋で高線量蒸気

 東京電力福島第1原発1号機の原子炉建屋内で東日本大震災発生当日の3月11日夜、毎時300ミリシーベルト相当の高い放射線量が検出されていたことが14日、東電関係者への取材で分かった。高い線量は原子炉の燃料の放射性物質が大量に漏れていたためとみられる。
 1号機では、津波による電源喪失によって冷却ができなくなり、原子炉圧力容器から高濃度の放射性物質を含む蒸気が漏れたとされていたが、原子炉内の圧力が高まって配管などが破損したと仮定するには、あまりに短時間で建屋内に充満したことになる。東電関係者は「地震の揺れで圧力容器や配管に損傷があったかもしれない」と、津波より前に重要設備が被害を受けていた可能性を認めた。
 第1原発の事故で東電と経済産業省原子力安全・保安院はこれまで、原子炉は揺れに耐えたが、想定外の大きさの津波に襲われたことで電源が失われ、爆発事故に至ったとの見方を示していた。
 地震による重要設備への被害がなかったことを前提に、第1原発の事故後、各地の原発では予備電源確保や防波堤設置など津波対策を強化する動きが広がっているが、原発の耐震指針についても再検討を迫られそうだ。
 関係者によると、3月11日夜、1号機の状態を確認するため作業員が原子炉建屋に入ったところ、線量計のアラームが数秒で鳴った。建屋内には高線量の蒸気が充満していたとみられ、作業員は退避。線量計の数値から放射線量は毎時300ミリシーベルト程度だったと推定される。
 この時点ではまだ、格納容器の弁を開けて内部圧力を下げる「ベント」措置は取られていなかった。1号機の炉内では11日夜から水位が低下、東電は大量注水を続けたが水位は回復せず、燃料が露出してメルトダウン(全炉心溶融)につながったとみられる。
 さらに炉心溶融により、燃料を覆う被覆管のジルコニウムという金属が水蒸気と化学反応して水素が発生、3月12日午後3時36分の原子炉建屋爆発の原因となった。
                      2011/05/15 02:02 【共同通信


サラサドウダンツツジ・・・小海町の花です。