IAEAの調査報告書が総理官邸に渡された。その内容は2点。
第一点は、「事故の原因は津波によるものとした上で、津波の危険性を過小評価していたと指摘。原発の設計者や運営者はリスクの評価手法を最新の基準に更新すべき」ということである。
第二点は、「規制当局である原子力安全・保安院の独立性が保たれるべき」ということである。
第二点については、誰が考えても当たり前のことである。しかも、すでに2007年にもIAEAに注意されながら、政府が放置してきたことである。現在、原子力安全保安院は、経済産業省の下部機関である。原発推進をする経済産業省の下に、原発をチェックする安全保安院を配置しても、安全チェックの仕事ができるわけがない。原発のチェック機関を置くとすれば、環境省か厚生労働省であるべきなのだ。これは前から、当ブログでも何度か指摘した。
第一点については、IAEAの指摘には不備がある。今回の福島第一原発の事故には、二つの大きな原因がある。ひとつは、津波が来る前に揺れによってすでに原子炉は重大な損傷を受けていたということである。つまり原発は本質的に地震に弱いという事実。もうひとつは、津波対策の不備である。ところがIAEAは津波対策の不備だけを指摘して、地震の揺れによって原子炉が損傷したことを指摘していない。なぜか?
津波が来る前に原子炉が地震によって破損したポイントは、あらゆる原子炉において共通する弱点である。それでもIAEAは日本列島で原発を建設して欲しいから、そのことは指摘しなかった。弱点とは、重さ100トンもある再循環ポンプが宙吊りになっているという構造上の欠陥である。これが激しく揺らされて、配管が破損して熱湯が噴出し、炉内の水位が下がり、燃料棒が露出して溶けてしまった。津波が来たのはその後である。この事実は、早く田中三彦氏が指摘し、遅れてNHKが4月8日に報道し、東電はたしか5月半ばになってやっと認めたことである。
だから、原発は津波対策・電源対策だけすれば、安全とはいえないのである。津波が来なくても、原発は壊れるものなのだ。原発周辺の木造家屋が壊れていないという程度の横揺れであったが、それでも原発はその構造上の欠陥ゆえに壊れたのである。
IAEAは、そのことを指摘しなかった。そして津波対策だけすればOKだという指摘をして終わった。茶番である。そもそもIAEAという組織もまた国際的原発村にすぎない。つまり、IAEAは日本の原子力安全保安院や御用学者たちのような組織なのである。IAEAという組織の目的は二つあって、原子力発電所をやっているふりをして核兵器開発をしていないかをチェックすることと、原発を世界中に広げて欧米の原発会社を儲けさせることである。世界が脱原発になってしまえば、IAEAの専門家たちの飯の種がなくなってしまう。
今、政府は全国の原発の津波対策・電源対策をさせて、それが終われば再開させようとしている。「チェック機関の独立性さえなんとかすれば原発自体はそれでOKだよ」とIAEAからお墨付きをもらったという格好である。IAEAもまた、いわば、「平安がないのに、『平安だ。平安だ。』」と民をあざむく偽預言者にすぎない。目を覚まして、だまされてはいけない。
庭のブルーベリー