苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

創世記13章12節 ロトの転落プロセスを表現する前置詞 「アド」から「ベ」へ

創世記13章12節

 

口語訳

アブラムはカナンの地に住んだが、ロトは低地の町々に住み、天幕をソドム移した。

 

新共同訳

アブラムはカナン地方に住み、ロトは低地の町々に住んだが、彼はソドムまで天幕を移した。

 

新改訳第三版

 アブラムはカナンの地に住んだが、ロトは低地の町々に住んで、ソドムの近くまで天幕を張った。

 

新改訳2017

アブラムはカナンの地に住んだ。一方、ロトは低地の町々に住み、ソドム天幕を移した。

 

聖書協会共同訳

アブラムはカナンの地に住み、ロトは低地の町に住んで、ソドムの近くに天幕を移した。

 

 アブラムのしもべたちとロトのしもべたちは、エジプトから戻って来てまもなくカナンの地で水場争い、草地争いをした。エジプトで、アブラムが保身のために妻サライを妹と偽ってファラオの側室として差し出した褒美で、彼らは物持ちになっていたのである。だが、カナンの地に戻ってそれが仇となって、争いが起こった。アブラムが甥のロトに先に土地を選ばせたところ、ロトは有利なヨルダン川の流れる沃野を選んだ。しかし、そこには罪深い町ソドムがあった。

 新改訳第三版は、ロトは「ソドムの近くまで天幕を張った」と訳していたが、2017は「ソドムに天幕を移した」と変更した。聖書協会共同訳は「ソドムの近くに天幕を移した」と訳している。前置詞は「アド」というもので、辞書的には「の近くまで」とか「の近くに」の方が正確である。これは実はとても大事な箇所で、メソポタミア連合軍がやってきてソドムが滅ぼされたときには、14章12節「ロトはソドム住んでいた」と書かれていて、この前置詞は英語でいうinにあたる「ベ」という前置詞なのである。

 つまり、ロトはソドムは罪深い町であると知っていたので、最初は天幕をソドムの近くには行ったが囲む城壁の外に張っていたのであるが、いつのまにやらソドムの中に住むようになっていたということを、前置詞「アド」から「べ」への変化は表現しているのである。だから、創世記13章12節に関しては、新改訳第三版までの方が正確に表現されていたのに、なぜか2017がわざわざ「ソドムに」と訳し変えてしまった。なぜだろう?残念である。