序 10年ほど前に信州で行っていた中学生のために作文教室ノートの第三章です。
高校受験で、小論文が課せられることがある。その場で、例えば「環境問題についてどう考えるか?」「インターネットについて」などといった課題がいきなり出されて、30分や1時間で原稿用紙2,3枚に書くことを求められる。どのように対処したらよいかについて、ここではまとめた。
まず次のことをしっかり腹におさめておくことが肝心である。
大原則:小論文は①論理的に、かつ、②抽象的主張に具体例を交ぜて書く。
小論文は内容の深さはともかく、上記2点を守ることが肝心である。
1.論理的に正しく
論理的な文章というのは、筋のとおった文章である。正しい文法で書かれており、文章全体を通して矛盾のないことが求められる。逆に非論理的文章とは、文法の間違い・前後のつながりの不一致、書き手のただの思い込みの文章である。
「非論理的な文章」の例
「政府は環境問題を重要だと叫んでいる。私も、それがとても大事だと思う。そして、教育問題も大事だと思う。学校に行けなくなる子供がともても多いのはいじめが原因なのに、それが隠されているのではないだろうか。これこそ速急に組むべき課題である。」
「論理的な文章」の例
「政府は環境問題を大きな声で訴えている。私もそれがとても大事だと思う。しかし、政府は本気なのだろうかと疑問をもつ。なぜなら、政府は環境を破壊してしまう原子力発電がベース電源であり、これを再稼働しようとしているからである。私は本気で環境がたいせつだと思うなら、まず脱原発を決断すべきだと思う。」
500~800字程度のごく短い小論文では、起承転結の構成を無理につくるよりも、結論を先に持ってきて、その理由説明をしていく形が、自分でも頭を整理しやすく、明快な文章が書ける。
私は・・・・・だと考える。
その理由は、第一に・・・・・であるからだ。
第二に・・・・・・・・・だからだ。
第三に・・・・・・・・・だからだ。
(したがって、私は・・・・と考える。)
大切なのは文法的な誤りがないこと。特に「そして」「しかし」「さて」「なぜなら」など接続詞が重要。そして文章全体を通して筋が通っていることであある。
2.抽象的主張に説得力をもたせる具体例を折りまぜる。
例えば「読書はたいせつだ」という言葉は抽象度が高い。だが、具体性がないから説得力がない。これに理由と具体例をつけると説得力が増す。
下は、結論を先に書いて、理由を三つ述べ、それぞれの理由に、具体的説明を付けた例文。「読書の重要性」について記された評論文のあとの自由作文の例。
<実例>~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
私は、読書は人生において大切だと思います。第一の理由は、漢字をたくさん覚えられるからです。私は中学時代のクラスで「漢字コンテスト」をして一番になったことがありますが、それは小学校の時には少年少女世界名作文学全集、中学に入ってからは父の現代文学全集を読んできたので、たいていの字の読み書きができたからです。
読書がたいせつな第二の理由は、私たちは自分が直接経験できないことを読書をとおして経験することができるからです。私は長野県の野辺山で生まれ育って都会で生活したことはないし、沖縄に行ったこともないし、もちろん外国生活もしたこともありません。けれども、読書を通じてであれば、外国の生活や都会の生活や沖縄の生活も少しは知ることができるでしょう。
第三の理由は、多くの読書をして多くの文章にふれ、間接的な経験をすると、自分でもそういう文章が書けるようになるからです。ある有名な小説家が書いた文章の書き方という本を読むと、最初の所に、「よい文章を書けるようになるには、とにかく多くの文章を読みなさい。」と書かれていました。そして、結論にも同じことが書かれていました。それを読んで、やっぱりよい文章を書く秘訣は読書なんだなとわかったのです。こういうわけで私は読書は人生で重要なことだと確信しています。
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とても素朴な構成ですが、これならば、自分の頭の整理もしやすく、書きやすく、論旨が明快です。
3.小論文のテーマいろいろ
小論文のテーマといえば、次のようなものが設定される。800字以内で書いてみよう。
「環境問題」
「読書」
「携帯電話」
「インターネット社会のモラル」
「家族」
「モラルと公共性」
「ボランティア活動について」
「高齢化社会について」
「複数の言語を学ぶことの大切さ」
「動物園の是非」
「人権や差別」
「戦争と平和」
「国際化と貧困」