苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

投げ上げた石は落ちてくる


  (もみじしたブルーベリーの葉っぱ)

 このごろ思うのだが、預言者とは特別な人ではなくてあたりまえのことを言っていた人たちだったのではないだろうか。申命記には、<イスラエルの民が祭司の王国にふさわしく、神を愛し隣人を愛する生活をしていれば、神は彼らをあらゆる面で祝福なさる。だがもしイスラエルが偶像を拝み、みなしご、やもめといった社会的弱者をないがしろにする不正義の国になるならば、神は外国の軍隊をつれてきて彼らを滅ぼし捕囚の憂き目にあわせる>と、あらかじめ書かれていた。預言者たちが社会を見渡すと、現に国中に偶像礼拝がはびこり、金持ちが贅沢にふけり、みなしご、やもめたちの訴えは聞かれない不正な世の中に成り果てていた。そして、東方には強大な国家が勃興してきていた。申命記によれば、このような状況であれば、神は外国の軍隊を来たらせてイスラエルの国を滅ぼし捕囚として連れ去っていかせるであろうことは、目に見えていた。だから、預言者たちはそのあたりまえのことを告げた。そして、その当たり前のことが起こった。それだけのことである。
 日本は地震国であるから、原子力発電所が遅かれ早かれ地震を原因として大事故を起こすこと、そして原発が大事故を起こせば非常な広範囲は放射能に汚染されて空気も食べ物も水も汚されるということは、ず〜っと以前からわかっていた。だから、高木仁三郎さんや、小出裕章さんや、今中哲二さんといった原子力の専門家たちは、原発を止めよと警告し続けてきた。彼らは預言者のようだと言われるが、言っていたことはごく当たり前のことだった。また、原子炉の専門家でなくても、少し事実関係とデータを見れば、地震原発が破綻することは目に見えていたから、筆者を含め各地の原発問題を認識した人々は署名に参加したり、数々の差し止め訴訟を起こして来た。彼らの主張もあたりまえのことだ。だが、官僚裁判官たちは、ただひとりを別として、国策に背く原発差し止め判決を出すことはなかった。
 阪神大震災以降、震度6〜7の地震が日本では一年1度くらい起こっている。その地震原発が破綻するのは「あたりまえ」である。なぜなら、日本の原発はもともと震度5までしか耐えられないように設計されているのだから。「加速度」という地震の揺れの単位でいえば、日本の原発でもっとも強く設計されている浜岡3号機、4号機でさえ、限界加速度は600ガルにすぎない。ところが、1993年釧路沖地震の加速度は922ガル、1995年阪神淡路大震災848ガル、2008年、内陸部の山々を崩壊させた岩手・宮城内陸地震4022ガル、2011年女川原発1号機の原子炉建屋実測値は476.3ガルだった。どれもこれも浜岡の限界加速度を軽く超えている。しかも、浜岡原発は想定震源域のほぼ中央の真上にある。浜岡以外の原発については、下の表を参照。どれもこれもお話にならない。http://ci.nii.ac.jp/naid/110002066513 (pdf論文p2表1)

      <各原発の想定加速度>
最強震度(過去記録による予想最大震度)/限界震度単位ガル(想定震度) 
東海              100/150
東海第二            180/270
敦賀1             245/368
福島第一1〜6         176/265
福島第ニ1・2          180/270
柏崎・刈羽1           300/450
柏崎・刈羽2〜5        300/450
浜岡1・2            300/450
浜岡3・4            300/600
美浜1・2            300/400
美浜3             270/405
高浜1・2            270/360
伊方1・2            200/300
玄海1・2            180/270
六ケ所村再処理場       230/375

 つまり、近年つぎつぎに起きている地震は、原発の設計時に想定した「限界震度」を軽く上回っているので、設計通りにことごとく壊れてきた。そして、これからまもなく起こる大地震によって、上記の原発のいくつかは破壊され、その結果、周辺地域には人が住めなくなり、非常に広範囲が放射能に汚染されて、日本中の食べ物も、水も、空気も汚されてしまう。今回の福島第一は、消防士・自衛隊たちの懸命の努力で原子炉そのものは水蒸気爆発しなかったので、これでも被害は少なかったのであるが、次の原発事故がそうであるとはかぎらない。水蒸気爆発すれば、その被害は福島原発どころの騒ぎではすまなくなる。
 しかも、福島第一原発の場合、位置と季節風の関係で放出された放射性物質の90パーセントは太平洋上空に拡散されたそうだが、他の地域の原発の場合、そのようには行かないだろう。こうした予測は石を上に向かって投げたら落ちてくるというくらい「あたりまえ」のことである。
 だから、なんだかんだと役にも立たない屁理屈をいうのはやめて、さっさとすべての原発を止めるべきだと、これまた「あたりまえ」のことを筆者は言い続けている。だが、お金と権力のある人々で耳傾ける人は少ない。喉もと過ぎれば熱さを忘れるというが、官僚と政治家と財界人と原発で飯を食っている教授たちは、まだのど元を過ぎてもいないのに、原発再稼動だ原発輸出だと言っている。彼らには、投げ上げた石が落ちてくることすらわからないのだろうか。

2001年日本地震分布地図・・・ちょっと怖いので心臓の弱い人は見ないこと。危機感のない人は見るべし。