いままで読んだ一番怖い本はなにかと問われたら、この本。幽霊が出てくるわけでも、ギャーッという悲鳴があるわけでもない。淡々と、克明に、史実が記述されているのである。
北海道のヒグマは居心地のよさそうな穴をさがして冬篭りをするのだが、時折、からだが大きくなりすぎて適当な穴を見つけることができないままに冬を迎えてしまうものがいる。そういうヒグマは、冬中、すきっ腹を抱えてあちらこちらをうろうろすることになる。本書は、大正4年12月そういうヒグマに襲われた北海道開拓村の惨事に取材し、一頭のヒグマに対してなすすべを持たない人間集団の無力と、ただひとりこれに立ち向かった老練な猟師を描いている。
もう表紙からして、こわいんだから。
来週、北海道で伝道会議。