苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

ペトロ・ネメシェギ『ペピの青春物語』

 今日の午後はおやすみを取って、ペトロ・ネメシェギ『ペピの青春物語』というやさしいことばで書かれた小説風に書かれた自伝を読みました。
 著者の故国は、ドナウ川の潤す美しいハンガリーです。その故国ハンガリーで、著者の小学生時代には、第一次大戦後のベルサイユ条約の不当を訴え、周辺国に対する侮蔑と愛国主義的記述で教科書が色塗られていたそうです。著者が青年期になると、ドイツにヒトラーが、イタリアにムッソリーニが登場して彼らの国々の華々しい「躍進」に青年たちが憧れを抱くような空気が生じてきます。先の戦争を知る年寄りたちが激しく戦争の悲惨を訴えるにもかかわらず。
 やがてハンガリーは、ドイツと同盟していたことのゆえに、隣国ユーゴスラビアに侵攻するドイツ軍の通り道とされて、その国土を踏みにじられ、否応なく戦争に巻き込まれていきます。さらに、ハンガリーは、米国・イギリスに宣戦布告し、さらにドイツのソ連侵略の手伝いに30万の兵士を派遣しました。その中に、ペトロ・ネメシェギさんの従兄弟二人が含まれていました。
 従兄弟の一人はヒトラー熱に浮かされるように、戦争は英雄的行動だと思って軍人になったのですが、ハンガリーを遠く離れて、ソ連兵たちを殺しながら、「なぜ自分はヒトラーの世界支配の欲望のために、この愛国的な青年たちを殺さねばならないのか?なんのためにこんなことをしているのか?」と自問し、戦争のむなしさをようやく悟ります。
 ドイツ軍は当初破竹の勢いで侵攻しますが、結局、冬将軍の到来に前進を阻まれ、スターリングラードソ連軍の激しい反攻にあって敗北してしまい、ハンガリー軍と同じくドイツと同盟していたルーマニア軍も退却してしまいます。
 その後、隣国ルーマニアがドイツとの同盟を破棄してソ連についたことによって、ソ連ルーマニアを通ってハンガリーを攻撃してきます。ドイツ軍は米英のノルマンディ上陸で風前のともし火となり、ハンガリーは結局ドイツに代わってソ連軍に占領されてしまいます。ヒトラーに勝るとも劣らぬスターリン独裁の下にハンガリーの教会は置かれることになってしまいました。
 当時、ネメシェギさんはイエズス会修練生でした。イエズス会ハンガリー国内では、スターリン弾圧下ではもはや司祭を育てることは不可能と判断して、修練生を西側に出国・亡命させて訓練することにしました。そこでネメシェギさんは鉄条網を潜って西側に亡命して後に司祭となり、日本への宣教師となったのでした。

 
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