苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

かくありたい

 若い頃、『旅人』という湯川秀樹の若き日の自伝を読んで以来、この人物に関心がある。下の文章を見つけたので、ここに置いておく。

 

森毅は、晩年の湯川秀樹の人柄をしのばせるエピソードをいくつか紹介している。
 
 最初のは森敦が森毅に教えてた話。
 
 おそらく少人数を前にしての講義だったのだろう。
 よくできる学生が、湯川が黒板で展開する数式に誤りを見つけた。
 それを指摘すると、湯川はうーんとうなり、しばらく考えたが何ともすることができず、立ち往生してしまった。
 それから「ちょっと待っとき」と言って、ぷいと教室を出た湯川は、しばらくすると岡潔(数学者)を連れて教室に戻ってきた。
 「これなんやけど」
と湯川は岡に黒板の数式を示し、岡はすぐに
「ああ、湯川せんせ、ここが違いますわ。こうやなくて、こうでしょ」
と数式を直した。
 湯川はしばらくそれを見つめて考えていたが、
「ああ、そうか。なるほどなあ。みんなも分かったか? 授業つづけるで。あ、岡君、ありがとうな」
ということが一度や二度ではなく結構あったのだそうだ。
 呼ばれてやってくる岡も岡だが、呼びにいく湯川も湯川である。

readingmonkey.blog.fc2.com