苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

要約 内藤新吾「原爆を投下させた死の商人たち」

 上述の文章を読んで、衝撃を受けた。その要約を以下に記す。

 1945年8月、米国は広島と長崎に原爆を落とした。戦争末期、すでに日本は戦力を失い、その降伏は時間の問題であり、軍事的には原爆を落とす必要はなかったが、別の目的があって米国は日本に原爆を落としたかった。
 硫黄島戦・沖縄戦を戦ってきた経験からして、米軍兵士のさらなる犠牲をさけるため本土決戦を回避することを望んだから原爆を落としたということが、しばしば米国側の公の立場からの説明として聞かされる。硫黄島で米軍は死者6821名、沖縄戦では米軍の死者は12500人。本土決戦となれば米軍将兵の犠牲が桁外れに大きくなることが予想された。
 だが、これは原爆を落とした本当の目的ではない。というのは、米国は戦争末期、日本が降伏しないように画策していたという事実があるからである。4月には「アメリカの統合参謀企画部はトルーマン大統領に対し、天皇制の護持さえ保障すれば日本は降伏するので、無条件降伏を突きつけるべきではないとする厳しい指摘をしている。」「同年7月には天皇が特使を派遣してソ連を介して戦争終結に向けて和平を求める伝聞を傍受しても、トルーマンはこれを無視している」。7月26日に米英中の名で発表されたポツダム宣言では、日本が天皇制が維持できるかにこだわっていたことを知っていながら、それには一切触れなかった。つまり、米国は日本がすぐに降伏しないようにと意図していたのである。米軍兵士の犠牲を少なくしたいなら、一日も早く降伏させたであろうが、そうはしなかったのである。
 なぜ米国は日本の降伏が先延ばしになるように画策したのか?それは原爆がまだ完成していなかったからである。米国はどうしても日本に原爆を落としたかった。しかも、広島ウラン型と、長崎プルトニウム型の二種類を落とす必要があった。
 原爆投下の真の目的のひとつは政治的なことで、戦後のアメリカの世界支配を磐石なものとすることであった。ヨーロッパが戦場になって西欧列強が力を落とし、次にソ連が力を伸張してこようという時期に、資本主義世界の盟主アメリカは原爆を保有する圧倒的な軍事力をもつことを世界に誇示したかった。
 原爆投下の真の目的のもうひとつは、死の商人軍需産業)の商売上の理由であった。原爆を製造したデュポン社にとって、広島・長崎の原爆投下は、最新兵器のデモンストレーションであった。二種類の原爆を落としたのも両者の殺傷能力の違いを実際に使用することによって知るためだった。そのために、米軍は広島に原爆を投下するに先立って、8月に入る前から連日連夜B29を広島上空に素通りさせ、人々が空襲に対する警戒心を緩めるようにしたという。内藤師の文章から抜粋しておく。
「8月にはいる前からB29は連日連夜、警報のサイレンはなっても何もせずただ通過していくだけであった。人々はやがて慣れっこになり、警報が解除されると安心して防空壕から出て来た。8月6日も前夜にB29が通過。翌朝ふたたび飛来があっても警報が解除された後、人々が安心して活動を開始している最中に、エノラ・ゲイが到着した。できるだけ大勢の人が無防備な状態でどのような被害を受けるのか、その人体実験がなされた第一投であった。」(書き写すうちに胸が苦しくなってきた)
 さらに、米国は戦後日本に原爆傷害調査委員会(ABCC)を設置して活動したが、一切、患者の治療にはあたっていない。単に原爆の後遺症のデータがほしかっただけなのだ。

<筆者メモ>
 米国の二つの原爆投下は、悪魔的所業だと非難するほかない。あの戦争の時代、「神国」を名乗っていた大日本帝国は悪魔化していたが、「キリスト教国」を名乗っていた米国もまた悪魔の手先となっていた。悪魔は権力者と金持ちを手下として用いて、その悪しきわざを行った。国家というものは、本来的にただ社会秩序を維持するための神の道具にすぎず、神のことばを語ることは許されていない。「神国」であれ「キリスト教国」であれ「仏教国」であれ「イスラム国」であれ、国家というものが、なんらかの宗教を利用して神的な権威を帯びて、国民を愛国心で燃え立たせて戦争に動員するときには、権力者と財界人が悪魔の手下になっているのである。

「また私は見た。海から一匹の獣が上って来た。これには十本の角と七つの頭とがあった。その角には十の冠があり、その頭には神をけがす名があった。私の見たその獣は、ひょうに似ており、足は熊の足のようで、口は獅子の口のようであった。竜はこの獣に、自分の力と位と大きな権威とを与えた。」黙示録13:1,2

 「海からの獣」とは国家権力を、「竜」とは悪魔を指している。


追記>聖書から見た「国家とその役割」については下記参照。
http://d.hatena.ne.jp/koumichristchurch/20090806/p1