苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

「隠された被曝労働者―日本の原発労働者」

1995年イギリスchannel4で放映されたもの。本来は日本の制作会社によるもので、NHKで放送される予定だった。ところが、上からの圧力で放映が禁止されてしまったという。



 原発は、神に対しては、その創造の基本プランを否定するという神の作品の管理者としての越権の罪である。原発は、人に対しては、必然的に被曝労働者を伴わなければならないゆえに、隣人愛の戒めに背く罪である。そして、原発は被造世界に対してはこれを汚し破壊する罪である。このビデオは特に原発が隣人愛に背く罪であることをレポートしている。被曝労働者たちとは、東電や中電の社員ではなく、農民や漁民であり大都市のたとえば東京なら山谷、大阪でいえば釜ケ崎の「寄せ場」の労働者たちである。
 なぜ我々はこのような罪深い原発を黙認してきてしまったのだろうか。一つには、こうした事実を政府も電力会社も学者たちも、そして政府と電力会社に雇われたマスコミもひた隠しにしてきたからである。筆者自身、この問題に、野宿者の食糧支援をしている藤田寛兄に教えていただくまで気付かなかった。まったく知らなかったといえば嘘であるが、ほとんど実情を知らなかった。いや、知ろうとしなかったのだ。
 今回、福島原発事故によって、その致死的な作業にあたる「作業員」と呼ばれる人々が東電の社員でなく、下請け会社の名もない人々であるということを国民は広く知ることになった。けれども、東電はその雇用の実態をなおひた隠しにしている。隠さなければならないようなことをさせているからであろう。
 しかし、福島原発事故を目の当たりにして、なおも「識者」の中に原発が必要という人々がいる。結局それは経済至上主義いいかえれば拝金主義(マモニズム)という偶像崇拝のせいである。「日本の経済的繁栄のためには、原発が必要だ。被曝労働者が病気になったり、死んだりすることはやむをえない。気分が悪いから、そういう人のことは、見ないこと聞かないこと言わないことにしよう。」というのである。私たちキリスト教徒まで、こうした経済至上主義・拝金主義・ご都合主義に汚染されているのでは、どうして地の塩としての任務を果たすことができよう。塩気を失った塩は、捨てられるだけである。

「しかし、あなたの目が悪ければ、全身も暗いだろう。だから、もしあなたの内なる光が暗ければ、その暗さは、どんなであろう。だれも、ふたりの主人に兼ね仕えることはできない。一方を憎んで他方を愛し、あるいは、一方に親しんで他方をうとんじるからである。あなたがたは、神と富とに兼ね仕えることはできない。」マタイ福音書6:23,24

 こうした被曝労働者の問題は、現在も同じである。
以下、毎日新聞から引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  

<福島第1原発>「ババ引くのは作業員」嘆く下請け社員
毎日新聞 4月21日(木)2時36分配信

操作室でがれきの撤去作業をする作業員=東京電力提供
 福島第1原発の復旧作業を担う作業員の被ばく線量を定めた特例措置があいまいに運用され、作業員の放射線管理手帳に記載されていないケースがあることが明らかになった。現場の作業員はあいまいな運用に不安を漏らすとともに「結局、ババを引くのは作業員」と嘆く声も聞かれた。関係者からは「線量管理がいいかげんだと、訴訟になった時に証拠が得られない可能性もあり、問題」との指摘も上がる。【袴田貴行、森禎行、日下部聡】

【特報】現場作業員の被ばく線量 管理手帳に記載せず

 ◇訴訟時、証拠ない恐れ

 「今回食った(受けた)分の放射線量は手帳に載らないから。安心していいから」。3月末に福島第1原発の復旧に従事した2次下請け会社の男性(30)は、作業開始直前、1次下請け会社の社員にそう告げられた。

 男性は3月下旬、所属するポンプ点検会社の社長から「上の会社から3日だけ人を出すよう頼まれた。(現場の状況が)ひどかったら途中で帰ってきていいから、とりあえず3日間だけ行ってくれないか」と言われ、同原発へ。作業内容は不明のまま駆り出されたが、現地に着くと、使用済み核燃料共用プールの電源復旧のためにケーブルをつなぐ専門外の作業を指示された。「とにかく人をかき集めて電源復旧をやっている感じだった」

 現場で経験者から指導を受けながら作業を進めたが、「初めてなので手間取って時間もかかったし、余計な線量を食った」。当時は線量計が足りず、6人のグループに1台だけ渡されたという。

 作業は放水の合間だったため、午前2時までかかったり、朝6時から始めたことも。待機場所の免震重要棟は「すし詰め状態で大人1人が寝っころがるのがやっと。仮眠も取れないのがきつかった。まともにやったら2日で限界」と振り返る。

 結局、3日間で計約12時間働き、線量計の数値は国が特例として引き上げた上限の5分の1、以前の上限の半分に当たる約50ミリシーベルトに達していた。「普段そんなにいくことはまずない」。日当は通常なら1日1万5000円程度だが、今回は事前に決まっていない。ただし「同じような仕事の募集が日当17万円だったらしい」。3日で50万円になる計算だ。

 男性の放射線管理手帳は、この作業時とは別の、震災前に登録していた元請け会社が管理しており、手元にはない。「ずっと自分の手元に帰ってきてないから(今回の線量が)載っているかどうかは分からない」。確認しようにも震災前の元請けは震災後、事務所が機能していない。「自分の手帳を戻すのは困難」と、今後に不安を募らせる。

 3次下請けで原発の補修に当たる建設会社社員の男性(28)は線量管理があいまいになっていることについて「そうでもしないと原発を止められない感覚があるのではないか」と指摘する。その上で「手帳の管理は下請けによって違う。将来の仕事を受注するため(社員の線量を低くしようと)下請け会社が手帳に今回の数値を載せないことも考えられる。会社は仕事をもらえるかもしれないが、結局ババを引くのは作業員だ」と訴えた。

 元原発作業員が東電に損害賠償を求めた訴訟で原告代理人を務めた鈴木篤弁護士の話 原告は4年3カ月の累積70ミリシーベルトで多発性骨髄腫を発症したとして労災を認められた。250ミリシーベルトの上限自体が高すぎる。それを別枠にするなどむちゃくちゃだ。被ばく線量を証明できても裁判所はなかなか発症との因果関係を認めない。きちんと線量管理がされなければ、作業員が損害賠償を請求しようとしても基礎的な事実さえ証明できなくなる恐れがある。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜以上、引用〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

追記5月1日>
東電は今回の福島第一原発でも同じ手口でことを行なっているようである。毎日新聞が取り上げた。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110421-00000002-maip-soci


脱原発の手順http://d.hatena.ne.jp/koumichristchurch/20110409