苫小牧福音教会 水草牧師のメモ

聖書というメガネで、神が造られた世界と人間とその歴史を見てみたら、という意識で書いたメモです。

元国税庁調査員 大村大次郎『脱税の世界史』宝島社

 たいへん興味深い本を見つけました。『脱税の世界史』といいます。著者は元国税庁調査員です。内容は、古代ギリシャ古代エジプトのすぐれた税制と繁栄と税金逃れによる滅亡から説き起こし、秦の始皇帝ローマ帝国イスラム帝国モンゴル帝国、ヨーロッパ国王たち、フランス革命(中略)そして、現代のタックスヘイブンの問題が扱われています。

 これらの国々の隆盛と衰亡には、税金・脱税をめぐる歴史的法則があることを著者は明らかにします。それは、次のように要約されます。

「国家が隆盛するときというのは、だいたいにおいて富裕層がちゃんと税金を払っているときなのです。が、体制が長く続くと、必ずといっていいほど富裕層が、色んな手を使って税を逃れるようになります。そうなると、国は貧しい者から多くの税を徴収するようになり、国が乱れ崩壊していくのです。」p21

 

富裕層から政治家・官僚への寄付・ワイロ

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富裕層への税軽減 

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税収減の埋め合わせのために庶民への増税 ↓

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庶民民が疲弊し体制への不満鬱積

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国家が崩壊

 

 これはまさに現代日本の失われた30年そのものではないでしょうか。こうした状況に陥る以前、我が国は「総中産階級社会」と言われていました。その時代の経済理論はケインズ経済学で、素人的な印象でいうと自由市場経済と計画経済のバランスを取ったものでした。米国をあの世界恐慌から立ち直らせたニューディール政策の背景にある経済学です。また課税の原則は累進課税でした。ところが30年ちょっと前から、「これからは新自由主義経済だ」とか、「結果の平等でなく、機会の平等の時代だ」とか宣伝されるようになりました。
 富裕層(経団連をはじめとする財界)が政府に献金をし票田を提供することによって法人税を減らさせ、その上、タックスヘイブンに金をため込んで合法的に事実上の脱税をするようになりました。また、官僚たちにはあからさまに献金をすると収賄罪に問われるので、富裕層は彼らに合法的な「後払いのワイロ」として天下り先を用意してきました。結果、税収が減りますから、それを埋め合わせるために消費税によって、あらゆる層から税金を集めるようになったのです。逆累進課税です。
 「いやいや消費税法第一条には消費税は福祉目的税であるとことばでは書いてあるではないか」と反論する人がいますが、実際には消費税は特別会計に入れられないで、一般会計に入れられていますから、どのようにでも用いることができるように設計されているのです。実際、消費税が福祉目的に用いられたのはごく一部です。実際、消費税収と法人税収とが相関関係があることはグラフを見れば一目瞭然です。

 また、以前は、課税の方法は累進課税でしたが、逆累進課税に変更されました。すなわち1億円以上年収がある人は、税負担比率が下がっていくという課税方法に改めたのです。

 貧困律に関するグラフを見て見ると、世界の主要国の中で日本だけ、課税前よりも課税後の方が貧困律が高くなるという現状です。本来、課税は富を再分配することによって格差を是正することを目的としていますが、日本では、税を徴収することによって、かえって格差を拡大するということが行われているのです。

 消費税、逆累進課税その他で、搾り取られて来た民が疲弊して現在にいたっています。かつての「一億層中流社会」は「格差社会」になり「勝ち組と負け組」の社会となりました。歴史の法則に照らせば、この後に続くのは「国家の崩壊」です。歴史上の国々は貧困層が逃げ出したり、不満を爆発させて革命が起きたり、さまざまな形で一番最初に挙げた国々は滅びてきました。もっともよく知られるのは18世紀のフランスでしょう。当時、フランスは第一身分(僧侶)、第二身分(貴族)、第三身分(庶民)と分けられていましたが、富の大半を第一身分、第二身分が持っていましたが、課税されたのは第三身分だけでした。ルイ16世の時代、フランス革命では第三身分の庶民はパンが買えないときに、マリー・アントワネットは「パンがなければお菓子を食べればいいのに。」と言ったというのはあまりにも有名な話。革命が起こると、彼女はルイ16世とともにギロチンで首を落とされました。歴史の法則です。

 (あれ?2019年7月にもこのブログで取り上げていることに、今気づきました。)