日本学術会議に関するニュースと、それに対する評論家やヤフーコメント欄を読んでみると情けなくなる。少しぼやきます。
1 首相の嘘か責任転嫁、あるいは、官邸官僚の犯罪
首相は初め自分が105名中6名任命しなかったと言っていたが、昨日は自分のところに上がってきた名簿にはすでに99名しかいなかったと言って、名も知れぬ部下に責任転嫁をしていた。二つの可能性がある。一つは首相の嘘・責任転嫁。もう一つは、首相のことばが万一事実だとすると、内閣府の挙げた101の名から、官邸の官僚の誰かが勝手に6名を外して首相に提出したということである。これはとんでもない犯罪である。
2 学術会議委員は会議手当2万円
また、政府官房長官は矛先をそらすために、学術会議は10億円も税金を投入しているんだと言って、まるで学者たちが税金をむさぼっているかのような印象操作をする。すると、フジサンケイグループの某上席解説委員は、学術会議委員は学士院メンバーになり年金250万円終身でもらうルールがあるなどと、根も葉もないでたらめをテレビで述べた。するとヤフーコメント氏たちは、10億円を委員の数210名で割り算して、学者たちが既得権にしがみついているんだなどと騒ぎ立てる始末。実際には、予算の大半は学術会議の運営に携わる数十名の職員たちの報酬として使われていて、委員である学者たちは会議に出席したとき日当2万円弱を受け取るだけだそうである。詳細はこちら。
https://www.cao.go.jp/yosan/soshiki/r2/pdf/50.pdf
3 「学問の自由」は何からの自由なのか?
さらに、「学問の自由」に対する侵害であるというのが学者たちの主張であるのに対して、「学問の自由」が何かを全く理解していない人々が、「いや学術会議自体が軍事研究をしないぞと表明して、学問の自由を侵している」と主張している。主張者の中には弁護士まで含まれているのだから呆れてしまう。勉強不足である。
およそ自由というのは、「なにからの」自由であるかが確定しなければ、中身はわからない。近代史において確立してきた自由というのは、信教の自由・思想信条の自由・表現の自由・集会結社など、すべて<国家権力からの自由>を意味している。その文脈の中での「学問の自由」である。だから日本学術会議が、自分たちは国家から独立して研究するのだとし、軍事研究はしないのだと、自分たちで定めていることは、なんら学問の自由を侵すものではない。日本学術会議の来歴は、先の戦争において学者たちも軍部に鼻づら引き回される国家に呑み込まれて、戦争協力してしまったことを反省して、政府が暴走しそうなときには、学的知見をもってそれにブレーキをかけるために1948年にスタートしたものである。政府が金を出すのだから政府の言いなりになれというのは、ばかな話である。政府は、「政府から独立して、権力者に忖度せず、学者であるあなたがたの研究に基づき、正しいと信じるところを述べてほしい。」というべきなのだ。
<追記>こちらに、今回の問題がよくわかる漫画あり。