小畑進『キリスト教慶弔学事典(婚葬)』、背が赤でなく緑の「同名の書(冠祭)」があります。いのちのことば社。単なるハウツー本でなく、死、結婚、年中行事、人生の通過儀礼のひとつひとつについて、自在に古今東西の哲学・宗教・文学思想の深みから説き起こして、聖書的な冠婚葬祭の具体的な手続きまでも親切に教えるというすごい本です。小畑進先生なればこそ書くことのできた本です。じっくり通読して後も、折りあるごとに開いて、なるほどと教えられ、また物を書く材料を提供してきてくれました。また、各方面の主要著書の案内ともなりました。その深さ、実用性からすれば、1万円でも安い。アマゾンの中古でわずか5000円で出ているのを今見つけました。
かつて、基督神学校の学生たちは、ずっと現場の牧師兼神学教師でありつつ、その博覧強記と鋭さと実存的思索の深さにおいて他の追随を許さない小畑先生を、「無冠の帝王」と呼んでいました。それは神学生たちの軽薄な評価でなく、誰もが認めるところでした。先生は異常な知の人でした。
私が現場に出て信徒宅に間借りしていたころ、ピンクの短パンに黄色いシャツに紅白帽子をかぶった変なおじさんが、訪ねてきました。世田谷から練馬の端っこまでマラソンして来られた小畑先生でした。「みずくさせんせーっ!」と励ましてくださいました。相当な変人でした。しかし、信州に開拓伝道に出てからも、折々、絵手紙をくださって、励ましてくださいました。ありがたい牧会者でいらっしゃいました。