私の世代で学生時代をクリスチャンとして過ごした人には、三浦綾子さんの本は殆ど読みましたという人が結構いるように思います。そういう中で一冊だけ紹介をというならば、やはり三浦綾子さんの若い日の自伝『道ありき』です。誠実に生きるということがどういうことなのかということを、綾子さんの恋人前川正さんから学びました。
何度も読んだので、多くの場面が胸に残っていますが、ひとつとりあげるとすれば、正さんが天に召されたという報せを綾子さんが受けた場面です。彼女はそのとき結核でギプスベッドに固定されていて寝がえりを打つことも許されず、ただあふれくる涙が耳へと伝って行きました。
「妻のごとく想うと吾れを抱きくれし君よ君よ 帰って来よ 天の国より」