小学生のころ、兄はときどき「十円玉拾った」と言って交番に届けては、きれいな十円玉に交換してもらって帰ってきた。ぼくはうらやましくて、いっしょうけんめい探したが犬のウンチしか見つからなかった。そんなもの交番に持っていくわけにも行かないし、新しいのと交換してもらいたくもない。
ところがある日、学校から帰宅したら、玄関がしまっていて、そこに不審な風呂敷包みが「落ちて」いる。交番に届けると、風呂敷包みの中から8個ほど玉子がはいった籠が出てきた。
おまわりさんに調書を取られて、意気揚々と家に帰ると、母と来客が話している。「おかしいわあ。玉子の包み、玄関に置いといたんやけど。」
玉子は来客の持ってきてくださった手土産だったのだ。・・・お客さんと交番に行くと、1割の謝礼を渡すようにと指導があり、ぼくはお小遣いをもらってしまった。大金だった気がする。
お客さんは笑って、母は平身低頭していた。